「先生ならどう考える?」と問い続けた生徒との対話 ~答えを押し付けるのではなく、一緒に考える支援~(実践編)
はじめに
ある日の授業。この生徒は勉強を始める前に、必ずと言っていいほど何か一つ質問をしてきました。
「先生ならどう考える?」それが、この生徒の口ぐせでした。
どう考える?
そうやなあ・・・。これはすぐに答え出せんから次回までの宿題にさせて。
いつもちゃんと考えてきてくれるもんね。ほとんどの人はめんどくさがるのに。
まあ、そうやろうけど、なかなか興味深いやん。こういうのって♪
先生ならどう考える?
担当してきた多く人は、自分の話をじっくり聴いてもらうことで少しずつ心が整理されていくタイプでした。
しかし、この生徒は違いました。話を聴いてもらうことよりも、「先生という一人の人間はどう考えるのか」を知りたがるのです。
私自身も答えを持っているわけではありません。それでも毎回、本気で考え、本気で答え続けました。
🔴 生徒
「先生、生きる意味って何なんだろう。」
🔵 講師
「難しい質問だね。どうしてそう思ったの?」
🔴 生徒
「最近ずっと考えてる。でも考えれば考えるほど分からなくなる。」
「先生ならどう考える?」
私は少し考えてから答えました。
🔵 講師
「私は、生きる意味は最初から決まっているものじゃなくて、自分で少しずつ作っていくものだと思ってる。」
🔴 生徒
「でも、それって本当にそうなの?」
🔵 講師
「分からないよ。これが正解とは思ってない。でも今の私はそう考えている。」
🔴 生徒
「なるほど……。」
この生徒は、正解を探しているというより、いろいろな考え方を集めているようでした。
その考え方はどうやって思いついたの?
翌週も同じように質問が始まりました。
🔴 生徒
「先生、その考え方って、どうやって思いついたの?」
🔵 講師
「本を読んだり、人と話したり、自分で失敗したり…。いろいろ経験して少しずつ考えが変わってきたかな。」
🔴 生徒
「じゃあ、先生も昔は違う考えだった?」
🔵 講師
「もちろん。今でも変わることがあるよ。」
🔴 生徒
「大人って、みんな答えを持ってると思ってた。」
🔵 講師
「そんなことないよ。大人も分からないことはたくさんある。」
🔴 生徒
「じゃあ、分からないまま生きてもいいのかな。」
🔵 講師
「私はいいと思う。全部に答えを出そうとすると苦しくなることもあるからね。」
その言葉を聞いて、生徒は少し肩の力が抜けたように見えました。
答えを探すことより、考え方を増やそう
ある日、生徒は少し笑いながら言いました。
🔴 生徒
「先生に聞くと、毎回違う角度から返ってくるよね。」
🔵 講師
「できるだけ別の見方を伝えようと思ってるからね。」
🔴 生徒
「前は『正解は一つ』だと思ってた。」
「でも最近は、『考え方っていっぱいあるんだな』って思えるようになってきた。」
🔵 講師
「その変化はすごく大きいと思う。」
「一つしか考え方がないと、その考えに縛られてしまう。でも、選択肢が増えると心にも余裕ができる。」
🔴 生徒
「先生が答えを教えてくれたというより、一緒に考えてくれた感じだった。」
その言葉を聞いて、私は少し安心しました。
答えではなく、一緒に考える時間
授業の終わり際、生徒がこんなことを話してくれました。
🔴 生徒
「昔は、誰かが正解を教えてくれれば楽になると思ってた。」
「でも違った。」
「先生と話しているうちに、『正解がなくても考え続ければいいんだ』って思えるようになった。」
🔵 講師
「私も毎回、本気で考えて答えていたよ。」
「だから一緒に考える時間が、お互いにとって大切だったんだと思う。」
🔴 生徒
「また来週も聞いていい?」
🔵 講師
「もちろん。」
「私もまた考えてくるよ。」
その後も、生徒からの「先生ならどう考える?」という質問は何度も続きました。
人生、人間関係、将来、幸せ、努力、自由…。
毎回テーマは違いましたが、私たちは一つひとつの問いに向き合い、考え続けました。
すぐに悩みがなくなったわけではありません。
それでも、一つの考え方しか持てなかった生徒が、少しずつ多くの視点を受け入れられるようになり、「前ほど苦しくない」と話してくれるようになりました。
答えを与えることはできなくても、一緒に考え続けることはできる。
私は今でも、その時間こそが支援の大切な価値の一つだったと感じています。
理論編はこちらから
「先生ならどう考える?」と問い続けた生徒との対話 ~答えを押し付けるのではなく、一緒に考える支援~(理論編) |
話を聞くときは相手の話をきちんと捉え、こちらの意見は重要でないことが多いですが、今回は「答えを一緒に考える支援」です 1. はじめに 2. 傾聴だけでは十分ではない場合もある 3. 「先生ならどう考える?」は依存ではない 4. 支援者にも「考える力」が求められる 5. 「考え方の引き出し」を増やすことが苦しさを減らす
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