⑭ 毎日の生活リズムを整えるコツ(理論編)

はじめに

子どもが学校へ行けなくなると、保護者が心配することの一つが「生活リズム」です。

朝になっても起きてこない。

昼近くになってようやく起きる。

昼間はあまり活動しない。

夜になると元気になる。

ゲームや動画を見ているうちに寝る時間が遅くなり、気づけば昼夜逆転に近い生活になっている。

そんな様子を見ると、

「このままではもっと学校へ戻れなくなるのではないか。」

「朝はちゃんと起こした方がいいのではないか。」

「夜は無理にでもスマホを取り上げた方がいいのではないか。」

と不安になるでしょう。

確かに、睡眠や食事などの生活リズムは、心身の状態を整えていくうえで大切です。

しかし、不登校の子どもの生活リズムを考える時には、一つ注意したいことがあります。

それは、

「生活リズムを整えること」と「学校へ行っていた頃と同じ生活に急いで戻すこと」は違う

ということです。

心や体が強く疲れている時期には、長く眠ることが必要な場合もあります。

朝起きられないからといって、本人の意志が弱いと決めつけることもできません。

だからこそ、

「明日から朝7時に起こす」

というような急激な立て直しではなく、今の状態から少しずつ生活の土台を整えていくことが重要です。

まず「生活リズムが崩れた=怠け」と考えない

不登校になると、学校へ通っていた時に存在していた一日の枠組みがなくなります。

朝起きる理由がなくなる。

決まった時間に家を出なくなる。

授業や休み時間という区切りもなくなる。

その結果、生活時間が後ろへずれていくことがあります。

夜になると元気になる理由

保護者からすると、

「朝は起きられないのに、夜は元気なのはなぜ?」

と思うかもしれません。

しかし、子どもにとって朝は、

「学校へ行かなければならない時間」

と結びついている場合があります。

朝になると学校を意識する。

家族が学校や仕事へ出かける。

同級生が登校していることを考える。

そうした緊張がある一方、夕方から夜になると、

「今日はもう学校へ行かなくていい。」

という安心感が生まれることがあります。

そのため、夜になると少し元気に見えることがあります。

単純に、

「夜更かししているから朝起きられない。」

だけでは説明できない場合もあるのです。

最初は「休むこと」が必要な場合もある

不登校になった直後など、心身の疲れが強い時期には、まず十分に休むことが必要な場合があります。

長く眠る。

何もしない。

ぼんやりする。

好きな動画を見る。

ゲームをする。

そうした生活を見ると保護者は焦ります。

しかし、強く消耗している時期に、

「明日から規則正しい生活に戻そう。」

と急に要求すると、さらに負担が増えることがあります。

まず、

「今は回復のために休む時期なのか、それとも少しずつ生活を整えられる状態なのか」

を見ることが大切です。

生活の乱れと体調不良を決めつけない

睡眠の乱れや朝の強い不調が長く続く場合には、「本人の気持ちの問題」と決めつけないことも重要です。

体調面で気になることがある場合や、生活への影響が大きい場合には、必要に応じて医療機関など専門家への相談も検討します。

生活リズムを本人の努力だけの問題にしないことが大切です。

生活リズムは「一気に直す」のではなく一つずつ整える

生活リズムが崩れると、保護者は全部を一度に直したくなります。

「夜は11時までに寝る。」

「朝7時に起きる。」

「三食食べる。」

「昼間はゲームをしない。」

「毎日外へ出る。」

しかし、一度に多くのことを変えようとすると、続かないことがあります。

最初の目標を一つに絞る

例えば、現在午前2時に寝て昼12時に起きている子どもに、

「明日から11時に寝て7時に起きよう。」

と言っても、簡単には変えられません。

そこで、

「まず午前中に一度カーテンを開けよう。」

「起きたら何か飲もう。」

「昼食はなるべく一緒に食べよう。」

など、できそうなことを一つ決めます。

小さな変化を続ける方が、結果的に生活全体を整えやすくなります。

起床時間だけにこだわらない

生活リズムというと「何時に起きるか」ばかりを見がちです。

しかし、一日のリズムをつくる要素はそれだけではありません。

起きたらカーテンを開ける。

顔を洗う。

着替える。

食事をする。

日中に少し体を動かす。

風呂に入る。

夜は少しずつ刺激を減らす。

こうした行動も一日の区切りになります。

「朝7時に起きられなかったから今日も失敗」

ではなく、

一日の中にいくつかの区切りをつくる

と考える方が取り組みやすくなります。

15分、30分の変化でもいい

生活時間が大きく後ろへずれている場合、一日で数時間戻そうとしないことです。

例えば、

「昨日より30分早く起きられた。」

それでも一つの変化です。

小さく動かし、それが安定したら次を考える。

生活リズムは短距離走ではなく、少しずつ調整していくものと考えます。

「朝起きる」より一日の活動に目を向ける

睡眠だけを直そうとしても、うまくいかないことがあります。

一日の過ごし方全体を見ることも重要です。

昼間に少し活動を入れる

ずっと部屋の中で過ごしていると、一日の変化が少なくなります。

そこで、本人に余裕が出てきたら、小さな活動を入れてみます。

家の周りを少し歩く。

コンビニへ行く。

犬の散歩をする。

家族と買い物へ行く。

洗濯物を取り込む。

好きな料理を作る。

必ずしも「勉強」である必要はありません。

まずは、

起きている時間の中に活動をつくる

ことが大切です。

外へ出られないなら家の中からでもいい

不登校の子どもに、

「昼間は外に出なさい。」

と言っても、外出そのものが負担になっている場合があります。

その時は、無理に外へ出す必要はありません。

リビングへ来る。

窓を開ける。

一緒に昼食を作る。

少し掃除をする。

家の中でできる活動から始めることもできます。

勉強を生活改善の条件にしない

「生活を整えるなら勉強もしよう。」

とセットにしたくなることがあります。

しかし、心身の状態によっては、勉強はまだ大きな負担かもしれません。

まず、

起きる。

食べる。

着替える。

少し活動する。

休む。

眠る。

という生活の土台を整え、その後に学習を考えても遅くありません。

ゲーム・スマホと生活リズムは「禁止」より使い方を考える

生活リズムが崩れると、ゲームやスマホが原因だと考えたくなります。

確かに、夜遅くまでゲームや動画を続けることが睡眠に影響することはあります。

だからといって、すべて取り上げれば解決するとは限りません。

ゲームが人とのつながりになっていることもある

不登校になると、友達と会う機会が減ります。

その中でオンラインゲームが友達との貴重な交流になっている場合があります。

また、好きなゲームや動画が、学校について考え続ける状態から一時的に離れる時間になっていることもあります。

だから、

「不登校なのだからゲームは禁止。」

と一律に考えるのではなく、どんな役割を持っているのかを見ることが必要です。

問題は「ゲームをすること」だけではない

見るべきなのは、

何時間使っているのか。

何時まで使っているのか。

睡眠にどの程度影響しているのか。

食事や入浴などができなくなっていないか。

他の活動がすべてなくなっていないか。

という生活全体です。

ゲームをするか、しないかだけで判断しないことが大切です。

ルールは親子で調整する

例えば、

「夜は何時くらいなら終われそう?」

「寝る前だけ少しスマホを離してみる?」

と話し合います。

もちろん、子どもの年齢や状態によっては保護者が一定の枠を示す必要もあります。

それでも、

「学校へ行かないから禁止。」

ではなく、

「体調や睡眠を守るためにどう使うか」

という考え方にすることが重要です。

生活リズムを整える目的を間違えない

生活リズムを整え始めると、保護者は期待します。

「朝起きられるようになった。」

「それなら学校へ行けるのでは?」

ここで注意が必要です。

朝起きられたことを登校につなげ過ぎない

ある日、子どもが朝8時に起きてきたとします。

その時、

「今日は早く起きられたね。学校行ってみる?」

と言われたらどうでしょう。

子どもは、

「早く起きると学校へ行かされる。」

と感じるかもしれません。

すると、せっかく整い始めた生活リズムそのものに抵抗が生まれることがあります。

朝起きられたら、

「おはよう。」

で構いません。

早く起きたことを、すぐ登校の条件にしないことです。

「できた日」と「できない日」があっていい

昨日は10時に起きた。

今日は12時だった。

昨日は散歩できた。

今日は部屋から出られなかった。

こうした波はあります。

そのたびに、

「また元に戻った。」

と考えないことです。

生活リズムが整う過程は、一直線ではありません。

できる日とできない日を繰り返しながら、少しずつ安定していくことがあります。

目標は「学校仕様の生活」ではなく「本人が生活しやすい状態」

最終的に登校や外での活動を考えるなら、ある程度の生活リズムは必要になるでしょう。

しかし、最初から、

「学校へ行くために朝7時に起きる。」

だけを目標にすると、本人にとって生活改善そのものがプレッシャーになります。

まず目指したいのは、

食べる、眠る、活動する、休むという基本的な生活が少しずつ安定することです。

その土台ができてから、必要に応じて次の生活リズムを考えていけばいいのです。

まとめ

不登校の子どもの生活リズムが崩れると、保護者は焦ります。

「早く朝型に戻さなければ。」

「ゲームをやめさせなければ。」

「昼間に寝かせてはいけない。」

そう考えることもあるでしょう。

しかし、生活リズムは命令だけで簡単に戻せるものではありません。

特に、心や体が疲れている時期には、まず十分に休むことが必要な場合があります。

そこから、

起きる時間を少し調整する。

カーテンを開ける。

食事の時間を一つ決める。

家の中で少し活動する。

余裕が出てきたら外へ出る。

夜のゲームやスマホの使い方を一緒に考える。

そのように、今できることを一つずつ増やしていくことが大切です。

そして、忘れてはいけないことがあります。

生活リズムを整える目的は、

子どもを早く学校へ戻すことだけではありません。

心と体が少し楽に過ごせる状態をつくること。

一日の中に活動と休息のメリハリを取り戻すこと。

そして、自分から何かを始められるだけのエネルギーを少しずつ蓄えていくことです。

朝早く起きられたから学校へ行かなければならないわけではありません。

昨日できたことが今日できなくても、それまでの変化がなくなったわけではありません。

「学校へ行ける生活に戻す」のではなく、「この子がもう一度、自分の生活を取り戻していく」。

その視点で、小さな変化を積み重ねていくこと。

それが、不登校の子どもの生活リズムを整えていくうえで、最も大切な考え方なのです。

実際の例はこちらから

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