⑱ 「学校へ戻る」以外の選択肢を知る(理論編)
- 1. はじめに
- 2. 「学校へ戻ること」だけをゴールにしない
- 2.1. 学校へ行けない状態と学べない状態は同じではない
- 2.2. 「戻る」ことが本人にとって最善とは限らない
- 2.3. 学校へ戻る道を否定する必要もない
- 3. 学校との関わり方にもいくつもの形がある
- 3.1. 教室以外の場所を利用する
- 3.2. 短い時間だけ学校へ行く
- 3.3. 学校とは「つながっているだけ」でもいい時期がある
- 4. 学校の外にも学びや居場所をつくる方法がある
- 4.1. 教育支援センターなどを利用する
- 4.2. フリースクールなど学校外の居場所
- 4.3. 家庭を学びの場所にする
- 5. 子どもに合った「学び方」を探していく
- 5.1. 集団では難しくても一対一なら学べることがある
- 5.2. 家庭教師の役割は「勉強を教える」だけではない
- 5.3. 学習の遅れは「全部取り戻す」と考えない
- 6. 進路にも一つではない道がある
- 6.1. 高校にもさまざまな学び方がある
- 6.2. 早い段階から「選択肢を知る」ことに意味がある
- 6.3. 選択肢は親が決めるためではなく、子どもが選ぶために集める
- 7. まとめ
- 7.1.1. 実際の例はこちらから
はじめに
子どもが学校へ行けなくなると、保護者はどうしても「どうすれば学校へ戻れるだろう」と考えます。
朝起きられるようにする。
学校の近くまで行ってみる。
保健室登校を試してみる。
担任の先生と話してみる。
少しずつ授業へ参加してみる。
もちろん、本人が元の学校へ戻ることを希望していて、その環境が本人に合っているのであれば、学校復帰を目指すことも一つの選択肢です。
しかし、不登校から先へ進む道は、それだけではありません。
別室登校や保健室登校を利用する。
教育支援センターなどにつながる。
フリースクールなど学校外の居場所を利用する。
家庭を中心に学習を続ける。
家庭教師などの個別支援を利用する。
中学校卒業後に通信制高校など、自分に合った学び方を選ぶ。
子どもの状態や年齢、地域、学校との関係によって、考えられる選択肢はさまざまです。
大切なのは、
「学校へ戻れなかったら終わり」
と考えないことです。
学校へ戻ることを唯一のゴールにしてしまうと、子どもは「学校へ行けない自分には未来がない」と感じてしまうことがあります。
必要なのは、学校へ戻ることだけを考えるのではなく、
「この子がこれから学び、人とつながり、自分の未来へ進んでいくためには、どんな方法があるだろう」
と考えることです。
「学校へ戻ること」だけをゴールにしない
不登校になった時、多くの家庭で最初の目標になりやすいのが「学校復帰」です。
これは自然なことです。
それまで毎日通っていた場所ですから、
「元の生活に戻ってほしい」
と思うのは当然でしょう。
ただし、学校復帰だけを唯一のゴールにしてしまうと、親子ともに苦しくなることがあります。
学校へ行けない状態と学べない状態は同じではない
学校へ行けないからといって、学ぶことそのものができないとは限りません。
例えば、自宅なら勉強できる子もいます。
一対一なら質問できる子もいます。
興味のある分野なら集中できる子もいます。
集団授業は苦手でも、自分のペースなら学べる子もいます。
つまり、
「学校へ行けない」
と
「学べない」
は別の問題です。
学校という場所から離れていても、学びを続ける方法は考えられます。
「戻る」ことが本人にとって最善とは限らない
子どもが元の学校へ戻りたいと思っているのであれば、その気持ちは大切にする必要があります。
一方で、
「元の教室へ戻ることを考えるだけで苦しくなる」
という子もいます。
その場合に、
「学校へ戻ることが回復だから」
と復帰だけを求め続けると、本人の負担が大きくなることがあります。
大切なのは、
「どこへ戻すか」
ではありません。
「これからどこで、どのように学び、成長していくか」
を考えることです。
学校へ戻る道を否定する必要もない
ここで注意したいのは、
「学校復帰を目指してはいけない」
という話ではないことです。
学校へ戻る。
別室へ行く。
学校外で学ぶ。
家庭を中心に学ぶ。
別の学校を選ぶ。
どれか一つだけが正解なのではありません。
本人の状態や希望に合わせて選び、必要なら途中で変更していけばよいのです。
学校との関わり方にもいくつもの形がある
「学校へ行く」「学校へ行かない」の二択で考える必要はありません。
学校との距離の取り方にも、さまざまな段階があります。
教室以外の場所を利用する
学校によって対応は異なりますが、教室以外の場所で過ごせる場合があります。
例えば、
保健室。
相談室。
別室。
図書室。
空いている教室。
などです。
「教室には入れないけれど、学校という場所には行ける」
という子もいます。
その場合、いきなり通常の教室へ戻るのではなく、本人が安心できる場所から学校とのつながりを作る方法も考えられます。
短い時間だけ学校へ行く
朝から夕方まで一日学校で過ごすことだけが登校ではありません。
放課後だけ行く。
人の少ない時間に先生と話す。
プリントを受け取りに行く。
好きな授業だけ参加する。
学校行事だけ参加する。
本人の負担にならない範囲から関わる方法もあります。
一度学校へ行けたからといって、
「次は一時間。」
「次は半日。」
「次は毎日。」
と必ず段階を上げる必要もありません。
本人が無理なく続けられる距離を探していくことが重要です。
学校とは「つながっているだけ」でもいい時期がある
子ども自身が学校へ行けなくても、保護者と学校が必要な連絡を取ることはできます。
学習内容。
学校行事。
進路。
提出物。
学校側で利用できる支援。
必要な情報を受け取れる状態を保っておけば、本人が動き出した時に選択肢を考えやすくなります。
学校との関係を完全に切るか、毎日通うか。
その二択ではありません。
「今は距離を取りながら、必要なところだけつながっておく」
という選択もあります。
学校の外にも学びや居場所をつくる方法がある
学校へ行けない期間が長くなると、
「このまま人とのつながりがなくなるのではないか」
「勉強が完全に止まってしまうのではないか」
と心配になることがあります。
そこで考えたいのが、学校外の選択肢です。
教育支援センターなどを利用する
地域によっては、不登校の子どもを支援する教育支援センターなどが設けられています。
利用方法や活動内容は地域によって異なりますが、学校とは違う環境で過ごしたり、学習したり、相談したりできる場合があります。
学校という集団には入りにくくても、より少人数の環境なら過ごしやすい子もいます。
まず保護者だけで相談できる場合もあるため、地域にどのような支援があるのか確認しておくとよいでしょう。
フリースクールなど学校外の居場所
民間のフリースクールなどを利用する方法もあります。
活動内容や考え方、費用、通う頻度などは施設によって大きく異なります。
勉強を中心にしているところ。
体験活動を重視しているところ。
子ども同士の交流を大切にしているところ。
自由に過ごせる居場所としての役割を重視しているところ。
さまざまです。
重要なのは、
「不登校だから、とにかくどこかへ通わせる」
ことではありません。
本人に合う場所かどうかを見ることです。
見学したから通わなければならないわけでもありません。
いくつかの場所を知ったうえで、本人と相談して考えていけばよいでしょう。
家庭を学びの場所にする
外へ出ること自体が難しい時期には、自宅を中心に学ぶ方法もあります。
学校の教科書。
問題集。
オンライン教材。
映像授業。
家庭教師。
興味のある本。
資格学習。
本人の状態によって、使えるものは変わります。
ここでも大切なのは、
「学校へ行っていないのだから、家で学校と同じ時間だけ勉強しなければならない」
と考えないことです。
最初は一日十分でも構いません。
一問だけでも構いません。
学習を完全に途切れさせないための小さな接点を作るところから始める方法があります。
子どもに合った「学び方」を探していく
不登校の子どもを見ていると、
「勉強する気がない」
ように見えることがあります。
しかし実際には、学習意欲そのものがなくなっているのではなく、これまでの学び方が合わなくなっている場合もあります。
集団では難しくても一対一なら学べることがある
学校の授業では、
先生の説明を聞く。
決められた時間で問題を解く。
分からなくても授業が進む。
周囲の生徒と同じペースで学ぶ。
という環境になります。
この環境が負担になっている子もいます。
一方、一対一であれば、
分からないところで止まる。
前の学年まで戻る。
今日は一問だけにする。
雑談をしながら進める。
本人の体調に合わせる。
といった調整がしやすくなります。
家庭教師の役割は「勉強を教える」だけではない
不登校の子どもへの家庭教師というと、
「遅れた勉強を取り戻す人」
と思われるかもしれません。
しかし、最初から学習量を増やすことが適切とは限りません。
まず会話をする。
好きなことについて話す。
一緒に問題を一問解く。
「分からない」と言える関係をつくる。
できたことを確認する。
そうした関わりから始める場合もあります。
家庭教師が、学校の先生でも親でもない「第三の大人」として関わることに意味があるケースもあります。
学習の遅れは「全部取り戻す」と考えない
不登校期間が長くなるほど、
「一年分遅れてしまった。」
「全部やり直さなければ。」
と考えがちです。
しかし、すべてを最初から同じ量で取り戻そうとすると、子どもにとって大きな負担になります。
まず現在の理解度を確認する。
必要なところまで戻る。
重要な単元から取り組む。
進路に必要な内容を優先する。
こうした方法で学習を組み直すこともできます。
大切なのは、
「遅れているから急ぐ」
ではなく、
「今の状態から、どこなら始められるか」
を考えることです。
進路にも一つではない道がある
不登校が続くと、特に中学生の家庭では進路への不安が大きくなります。
「このままで高校へ行けるのだろうか。」
「将来、仕事に就けるのだろうか。」
「人生が遅れてしまうのではないか。」
先のことを考えれば考えるほど、不安になるかもしれません。
しかし、進路も一つの形だけではありません。
高校にもさまざまな学び方がある
全日制高校だけでなく、定時制高校や通信制高校など、学び方には複数の形があります。
さらに、同じ種類の学校でも、
通学する頻度。
授業の受け方。
学校行事。
学習支援。
進路支援。
校風。
人との関わり方。
などには違いがあります。
「通信制ならどこでも同じ」
というわけではありません。
本人に合う環境かどうかを確認することが重要です。
早い段階から「選択肢を知る」ことに意味がある
進路をすぐに決める必要はありません。
しかし、
「こういう学校もある。」
「こういう学び方もある。」
と知っておくことには意味があります。
子どもが、
「今の学校へ戻れなかったら終わりだ。」
と思っている場合、
「別の道もある。」
と知るだけで気持ちが変わることがあります。
出口が一つしか見えない状態では、その出口へ進めないことが絶望につながりやすくなります。
出口がいくつもあると分かれば、
「自分に合う道を探せばいい。」
と考えやすくなります。
選択肢は親が決めるためではなく、子どもが選ぶために集める
保護者が情報を集めることは大切です。
しかし、
「ここなら大丈夫そうだから、ここにしなさい。」
と先に結論を出してしまうと、本人が置き去りになることがあります。
まず選択肢を知る。
本人に伝える。
見学できるなら見てみる。
本人の感想を聞く。
合わなければ別の方法を探す。
この繰り返しで構いません。
選択肢を増やす目的は、親が正解を決めるためではありません。
子ども自身が、
「自分はどうしたいのか。」
を考えられるようにするためです。
まとめ
不登校になった時、
「どうすれば学校へ戻せるだろう。」
と考えることは自然なことです。
しかし、学校へ戻ることだけが子どもの未来につながる道ではありません。
教室以外の場所で学校とつながる。
短時間だけ学校へ行く。
学校とは必要な連絡だけを続ける。
教育支援センターなどを利用する。
フリースクールなどの居場所を探す。
家庭で学ぶ。
家庭教師など一対一の支援を利用する。
自分に合った進路を探す。
さまざまな方法があります。
もちろん、すべてを利用する必要はありません。
今すぐどれかに決める必要もありません。
子どもの状態は変化します。
今は外へ出られなくても、数か月後には出られるかもしれません。
今は学校の話をしたくなくても、いつか自分から進路について話すかもしれません。
今は勉強できなくても、少しずつ学習への興味が戻ることもあります。
その時に大切なのは、
「学校へ戻れなければ、もう道がない。」
という状態にしないことです。
学校へ戻る道もある。
学校との距離を調整する道もある。
学校の外で学ぶ道もある。
家庭から始める道もある。
別の進路へ進む道もある。
選択肢を知ることは、学校復帰を諦めることではありません。
子どもの未来を一つの道だけに限定しないということです。
「戻れるかどうか」だけを考えるのではなく、
「この子は、どんな環境ならもう一度学び始められるだろう。」
「どんな場所なら安心して人と関われるだろう。」
「どんな進み方なら、自分でやってみようと思えるだろう。」
と考えていく。
選択肢が増えるほど、子どもは「今の学校へ戻れない自分」を責める必要がなくなります。
そして、
「ここが無理なら、別の道を探してもいい。」
と思えるようになります。
不登校の先に必要なのは、たった一つの正解を見つけることではありません。
子どもが自分に合った学び方や居場所、そして未来への進み方を選べるように、いくつもの道があることを知っておくことなのです。
実際の例はこちらから
⑱ 「学校へ戻る」以外の選択肢を知る(実践編)
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