⑭ 毎日の生活リズムを整えるコツ(実践編)
はじめに
昼夜逆転・・・戻すのは大変です・・・。
起きられん・・・。
戻せるといいんだけどね・・・。
分かってはいるけど・・・。
ま、「少しずつ」・・・ですな。
- 1. はじめに
- 2. 「昼の一時まで寝ているんです」
- 2.1. 朝から親子げんかになる
- 2.2. 「夜はあんなに元気なのに」
- 2.3. 「朝起きられない=やる気がない」ではない
- 3. 「では、好きなだけ寝かせるんですか?」
- 3.1. 一度に全部直そうとしていた
- 3.2. 最初に変えるのは「起床時間」でなくてもいい
- 3.3. 「昼ご飯だけ一緒に食べる」から始める
- 3.4. ゲームを全部取り上げた方が早い?
- 3.5. 子ども自身はどう思っているのか
- 3.6. 一日目から失敗した
- 4. 「できた」を大げさにしない
- 4.1. 少し早く寝たからといって、翌朝すぐには変わらない
- 4.2. 生活リズムは一つずつ変える
- 4.3. 小さな区切りを増やしていく
- 4.4. 外へ出ることも「学校」と結びつけない
- 5. 「学校へ戻すための生活」ではなく「自分の生活を取り戻す」
- 5.1. 親が「理想」と比べなくなる
- 5.2. 生活リズムが整ったからといって、すぐ学校へ行く必要はない
- 6. おわりに
- 6.1.1. 理論編はこちらから
はじめに
「先生、昼夜逆転だけは何とかした方がいいですよね?」
不登校の相談で、保護者からよく出てくる悩みの一つが生活リズムです。
学校へ行っていた頃は、朝7時には起きていた。
ところが学校へ行けなくなってから、起床時間が少しずつ遅くなった。
最初は9時だった。
それが10時になり、11時になり、気づけば昼過ぎまで眠っている。
その一方で、夜になると元気になり、ゲームや動画を深夜まで楽しんでいる。
そんな姿を見ると、
「朝起きられないのは、夜更かししているからでは?」
「この生活を許していたら、ますます学校へ戻れなくなるのでは?」
「親が強制的にでも生活を直すべきなのでは?」
と不安になるでしょう。
確かに、生活リズムを整えることは大切です。
しかし、不登校の子どもの生活を立て直す時、
「学校へ行っていた頃の生活に一気に戻そう」とすると、かえってうまくいかないことがあります。
今回は、中学二年生の息子が不登校になって三か月ほどたった家庭を例に、
「昼夜逆転をどうすればいいのか」
「ゲームやスマホをどう考えればいいのか」
「朝は起こした方がいいのか」
といった問題を具体的に考えていきます。
「昼の一時まで寝ているんです」
🔴 保護者
「先生、最近また一つ心配なことが出てきました。」
🔵 講師
「どんなことですか。」
🔴 保護者
「生活リズムです。」
「もう完全に崩れてきています。」
🔵 講師
「今、何時くらいに寝て、何時くらいに起きていますか。」
🔴 保護者
「夜中の二時とか三時です。」
「ひどい時は四時くらいまで起きています。」
「それで昼の十二時とか一時まで寝ています。」
🔵 講師
「学校へ行けなくなった頃からですか。」
🔴 保護者
「最初は違いました。」
「学校を休み始めた頃は、朝八時くらいには起きていました。」
「でも、だんだん遅くなって。」
「九時。」
「十時。」
「十一時。」
「今はお昼です。」
🔵 講師
「お母さんは、どうしていますか。」
🔴 保護者
「最初は起こしていました。」
「朝七時半くらいに、
『朝だよ。』
って。」
「でも全然起きなくて。」
「カーテンを開けたり、布団をめくったりしていました。」
🔵 講師
「お子さんは?」
🔴 保護者
「怒ります。」
「『学校行かないのに何で起きなきゃいけないの?』って。」
「それで私も、
『学校に行かなくても生活くらいちゃんとしなさい。』
って怒ってしまって。」
朝から親子げんかになる
🔵 講師
「朝は、どんな感じになっていますか。」
🔴 保護者
「最悪です。」
「私が起こす。」
「息子が怒る。」
「私も怒る。」
「主人まで、
『いつまで寝てるんだ。』
と言う。」
「結局、息子は布団から出てこない。」
🔵 講師
「そしてお母さんは?」
🔴 保護者
「イライラしたまま仕事へ行きます。」
「仕事中も、
『まだ寝てるんだろうな。』
って考えてしまいます。」
🔵 講師
「帰宅すると?」
🔴 保護者
「息子は起きています。」
「しかも元気なんです。」
「ゲームして、友達と笑ってるんです。」
🔵 講師
「それを見ると腹が立つ。」
🔴 保護者
「ものすごく腹が立ちます。」
「朝はあんなに起きられなかったのに、夕方になると元気。」
「夜になるともっと元気。」
「だったら朝起きなさいよって思います。」
「夜はあんなに元気なのに」
🔴 保護者
「先生、これって結局、夜更かししてるからですよね?」
🔵 講師
「夜更かしが朝の起きにくさに影響している部分はあると思います。」
「ただ、それだけで考えない方がいい場合もあります。」
🔴 保護者
「他に何があるんでしょう。」
🔵 講師
「お子さんにとって、朝はどんな時間でしょう。」
🔴 保護者
「朝?」
🔵 講師
「学校へ行っていた頃、朝起きたら何をしていましたか。」
🔴 保護者
「顔を洗って。」
「朝ご飯を食べて。」
「制服に着替えて。」
「学校へ行っていました。」
🔵 講師
「つまり、朝という時間そのものが『学校へ行く時間』と強く結びついている可能性があります。」
🔴 保護者
「ああ……。」
🔵 講師
「学校へ行けなくなっている子どもの中には、朝になると緊張が強くなる子もいます。」
「反対に夕方になると、
『今日はもう学校へ行かなくていい。』
という安心感が出てきて、少し元気になることがあります。」
🔴 保護者
「だから夜になると元気に見えることがある。」
🔵 講師
「そういう場合もあります。」
「朝起きられない=やる気がない」ではない
🔴 保護者
「でも先生、親からすると、どうしても怠けているように見えるんです。」
🔵 講師
「そうですよね。」
🔴 保護者
「私たちは仕事があります。」
「弟も学校へ行きます。」
「みんな朝起きる。」
「でも息子だけ寝ている。」
「そうすると、
『どうしてあなただけ?』
と思ってしまいます。」
🔵 講師
「では、少し違う見方をしてみましょう。」
🔴 保護者
「はい。」
🔵 講師
「今のお子さんが朝起きられないことを、
『生活態度の問題』
だけではなく、
『今の心身の状態を表しているもの』
として見てみるんです。」
🔴 保護者
「状態を表している?」
🔵 講師
「はい。」
「もちろん、夜更かしの影響もあるでしょう。」
「ゲームの時間も関係しているかもしれません。」
「でも、それだけではなく、
『今は朝から活動するだけのエネルギーが戻っていないのかもしれない。』
という視点も持つ。」
🔴 保護者
「起こすことより、まず状態を見る。」
🔵 講師
「そうです。」
「では、好きなだけ寝かせるんですか?」
🔴 保護者
「でも先生。」
「そうすると、結局好きなだけ寝かせることになりませんか。」
🔵 講師
「そこは二択ではありません。」
🔴 保護者
「二択?」
🔵 講師
「毎朝無理やり七時に起こすか、何時まででも寝かせるか。」
「その二つしか方法がないわけではありません。」
🔴 保護者
「では、どうしたらいいでしょう。」
🔵 講師
「今の生活から、少しだけ整えられそうなところを探します。」
🔴 保護者
「例えば?」
🔵 講師
「今は昼一時まで寝ることがあるんですよね。」
🔴 保護者
「はい。」
🔵 講師
「では、いきなり朝七時を目標にしない。」
「例えば、
『まず十二時くらいまでには一度起きてみる。』
というところから考えることもできます。」
🔴 保護者
「そんなに遅くていいんですか。」
🔵 講師
「今の状態から考えれば、十二時でも一時間前進ですよね。」
🔴 保護者
「確かに……。」
🔵 講師
「生活リズムを整える時に大切なのは、
『理想の時間との差』
だけを見ることではありません。」
「昨日の生活から、少し動いたかを見ることです。」
一度に全部直そうとしていた
🔴 保護者
「私、逆のことをしていました。」
🔵 講師
「どんなことですか。」
🔴 保護者
「紙に書いて部屋に貼ったんです。」
🔵 講師
「何を書いたんですか。」
🔴 保護者
「朝七時半起床。」
「八時朝食。」
「午前中は勉強。」
「十二時昼食。」
「午後は散歩。」
「夜十一時就寝。」
🔵 講師
「かなり学校へ行っていた頃に近いですね。」
🔴 保護者
「はい。」
「これを見た息子に、
『無理。』
って一言で言われました。」
🔵 講師
「お母さんは?」
🔴 保護者
「腹が立って、
『やる前から無理って言わないの。』
って。」
🔵 講師
「今、その予定表を見るとどう思いますか。」
お母さんは少し笑いました。
🔴 保護者
「今の息子には無理ですね。」
🔵 講師
「生活を整える時は、全部を同時に変えない方がいいことがあります。」
「まず一つ。」
「それが安定してきたら、次を考える。」
最初に変えるのは「起床時間」でなくてもいい
🔴 保護者
「では最初は、起きる時間ですよね。」
🔵 講師
「それも一つですが、必ずしも起床時間でなくてもいいですよ。」
🔴 保護者
「そうなんですか。」
🔵 講師
「例えば、
『起きたらカーテンを開ける。』
でもいい。」
「『起きたら水を飲む。』」
「『昼食だけはリビングで食べる。』」
「そんなことでもいいんです。」
🔴 保護者
「それで生活リズムになるんでしょうか。」
🔵 講師
「生活には『区切り』が必要なんです。」
「学校へ行っている時には自然にありました。」
「起床。」
「登校。」
「一時間目。」
「昼休み。」
「下校。」
「夕食。」
「入浴。」
「就寝。」
「ところが学校へ行かなくなると、その区切りが一気になくなります。」
🔴 保護者
「確かに、一日中自由になりますね。」
🔵 講師
「だから家庭の中で、小さな区切りをつくり直していくんです。」
「昼ご飯だけ一緒に食べる」から始める
🔵 講師
「お子さんは昼食をどうしていますか。」
🔴 保護者
「私が仕事の日は、冷蔵庫に入れてあります。」
「好きな時間に食べています。」
🔵 講師
「休日は?」
🔴 保護者
「私たちが十二時くらいに食べます。」
「息子は起きていれば一緒に食べることもあります。」
🔵 講師
「では最初は、
『休日はできそうなら昼食を一緒に食べる』
くらいからでもいいと思います。」
🔴 保護者
「朝七時に起こすよりは、できそうです。」
🔵 講師
「できそうなことから始めることが大切です。」
ゲームを全部取り上げた方が早い?
🔴 保護者
「でも、最大の問題はゲームだと思うんです。」
🔵 講師
「どのくらいやっていますか。」
🔴 保護者
「かなり長いです。」
「夕方から始めて、夜中まで。」
「友達とオンラインでやっています。」
🔵 講師
「お友達と話しながら?」
🔴 保護者
「はい。」
「学校の友達です。」
🔵 講師
「それなら、お子さんにとって友達との接点にもなっているんですね。」
🔴 保護者
「そうなんです。」
「だから取り上げるのもかわいそうで。」
「でも夜更かしの原因にもなっています。」
🔵 講師
「そこで、
『ゲームをするか、完全に禁止するか』
だけで考えないことです。」
🔴 保護者
「時間を決めるということですか。」
🔵 講師
「そうですね。」
「ただ、一方的に、
『今日から十時で終了。』
とすると反発が大きくなるかもしれません。」
「まず本人と、
『最近寝る時間が遅くなってるけど、自分ではどう思ってる?』
と話してみる。」
子ども自身はどう思っているのか
その日の夜。
お母さんは、ゲームを終えてリビングへ来た息子に声をかけました。
🔴 保護者
「ちょっと聞いていい?」
息子は少し警戒しました。
「何?」
🔴 保護者
「最近、寝るの三時くらいでしょう。」
「……うん。」
🔴 保護者
「自分ではどう思ってる?」
息子は少し驚いたような顔をしました。
「何が?」
🔴 保護者
「この生活。」
「別に怒る話じゃなくて。」
「自分では、このままでいいと思ってるのかなって。」
息子はしばらく考えました。
「よくはないと思う。」
お母さんは少し意外でした。
🔴 保護者
「そう思ってるんだ。」
「うん。」
「昼まで寝るの、俺も嫌だし。」
🔴 保護者
「じゃあ、もう少し早く寝たい?」
「できれば。」
🔴 保護者
「何時くらいならできそう?」
「十一時は無理。」
お母さんは、
「十一時に寝なさい。」
と言いそうになりましたが、やめました。
🔴 保護者
「じゃあ、何時ならできそう?」
息子は考えました。
「一時くらい。」
🔴 保護者
「今が三時くらいだから、一時?」
「うん。」
「友達もそのくらいならまだゲーム終われると思う。」
🔴 保護者
「じゃあ、まずそこからやってみる?」
「うん。」
その日、二人で最初の目標を決めました。
「まずは午前一時を目安にゲームを終える。」
朝七時起床ではありません。
十一時就寝でもありません。
理想から見れば、まだ遅い時間です。
でも、今の息子が、
「これならできるかもしれない。」
と思える時間でした。
一日目から失敗した
ところが翌日。
午前一時。
息子の部屋から、まだゲームの声が聞こえていました。
一時十分。
一時二十分。
お母さんは時計を見ながら、だんだん腹が立ってきました。
「自分で一時って言ったでしょう。」
そう言いたくなりました。
一時半。
ようやくゲームが終わりました。
息子がリビングへ水を飲みに来ました。
🔴 保護者
「一時だったんじゃないの?」
つい、口から出てしまいました。
息子の表情が変わりました。
「分かってる。」
🔴 保護者
「自分で決めたんでしょう。」
「最後の一試合が長引いたんだよ。」
🔴 保護者
「そうやって毎日言い訳してたら変わらないよ。」
「もういい。」
息子は部屋へ戻ってしまいました。
お母さんは、その場に立ったまま時計を見ました。
「またやってしまった……。」
翌日、お母さんは講師にそのことを話しました。
🔴 保護者
「先生、せっかく本人が決めたのに、初日から守れなかったんです。」
🔵 講師
「一時半には終わったんですよね。」
🔴 保護者
「はい。」
🔵 講師
「普段は何時くらいでしたか。」
🔴 保護者
「三時くらいです。」
🔵 講師
「では、昨日は?」
お母さんは、少し考えました。
🔴 保護者
「……一時間半、早かったです。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 保護者
「でも約束は一時でした。」
🔵 講師
「もちろん、決めたことを意識するのは大切です。」
「でも生活リズムを整える時、
『一時に終われたか、終われなかったか』
だけで見ると、変化を見失うことがあります。」
🔴 保護者
「変化?」
🔵 講師
「三時までやっていた子が、一時半に終えた。」
「完璧ではないけれど、昨日までとは違います。」
「その小さな変化をまず見るんです。」
お母さんは黙っていました。
そして、その日の夜。
息子がゲームを始める前に、お母さんのところへ来ました。
「母さん。」
🔴 保護者
「ん?」
「昨日、一時半になったけど。」
🔴 保護者
「うん。」
「今日は一時までに終わるから。」
お母さんは一瞬、
「絶対だよ。」
と言いそうになりました。
でも、少し考えてから答えました。
🔴 保護者
「分かった。」
そして、その夜。
十二時五十分。
息子の部屋から聞こえていたゲームの声が止まりました。
「できた」を大げさにしない
十二時五十分。
息子の部屋からゲームの音が止まりました。
しばらくして、息子が水を飲みにリビングへ来ました。
🔴 保護者
「今日は早かったね。」
息子は少しだけうれしそうな顔をしました。
「うん。」
お母さんは、
「やればできるじゃない!」
と言いそうになりました。
でも、その言葉は飲み込みました。
昨日のように評価するのではなく、今日は事実だけを伝えました。
🔴 保護者
「昨日より早く終われたね。」
「まあね。」
それだけでした。
大げさに褒められなかったことが、かえって息子には自然だったようです。
少し早く寝たからといって、翌朝すぐには変わらない
翌朝。
お母さんは少し期待していました。
「昨日は一時前にゲームをやめた。」
「なら、今日は少し早く起きるかもしれない。」
しかし、息子が起きてきたのは午前十一時半でした。
🔴 保護者
「……やっぱりこんな時間なんだ。」
思わず、そう言いそうになりました。
でも、昨日のことを思い出しました。
一日で全部が変わるわけではない。
そこで、
🔴 保護者
「おはよう。」
とだけ声をかけました。
息子は少し眠そうに、
「おはよう。」
と返しました。
以前なら、
「昨日早く寝たんだから、もっと早く起きられるでしょう。」
と言っていたかもしれません。
でも今回は言いませんでした。
生活リズムは一つずつ変える
数日後、お母さんは講師に話しました。
🔴 保護者
「先生、少し分かってきました。」
🔵 講師
「何がですか。」
🔴 保護者
「一つ変えたからって、全部すぐ変わるわけじゃないんですね。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 保護者
「私は、
『早く寝たら早く起きる。』
『早く起きたら朝ご飯を食べる。』
『朝ご飯を食べたら勉強する。』
みたいに、一気に全部つなげようとしていました。」
🔵 講師
「でも今は?」
🔴 保護者
「まず夜のゲームを少し早く終える。」
「今は、それだけでもいいのかなって。」
🔵 講師
「その方が続きやすいと思います。」
小さな区切りを増やしていく
ゲームを終える時間が少しずつ安定してくると、次にお母さんは昼食を意識するようになりました。
休日だけでも、できる日は一緒に食べる。
それだけです。
🔴 保護者
「お昼できたよ。」
息子が起きていれば、一緒に食べます。
起きていなければ、無理に起こしません。
ある日、息子の方から十一時半頃に起きてきました。
「今日、昼何?」
🔴 保護者
「うどん。」
「じゃあ食べる。」
大きな変化ではありません。
でも、昼食という一日の区切りが少しずつ戻ってきました。
外へ出ることも「学校」と結びつけない
さらに数日後。
息子が昼食後、玄関の方を見ながら言いました。
「コンビニ行こうかな。」
以前のお母さんなら、
「それなら学校にも少し行けそうじゃない?」
と考えたかもしれません。
しかし、今回は言いませんでした。
🔴 保護者
「何か買うの?」
「飲み物。」
🔴 保護者
「気をつけてね。」
息子は一人で外へ出ました。
十五分ほどで戻ってきました。
それだけです。
でも、昼間に外へ出るという活動が一つ増えました。
生活リズムは、時計の時間だけで整うものではありません。
起きる。
食べる。
外へ出る。
少し動く。
休む。
そうした一日の区切りが少しずつ戻ってくることで、全体の流れも変わっていきます。
「学校へ戻すための生活」ではなく「自分の生活を取り戻す」
数週間後。
息子の生活は、まだ完全に整ってはいませんでした。
夜一時を過ぎる日もあります。
昼近くまで眠る日もあります。
外へ出ない日もあります。
それでも、以前とは少し違っていました。
ゲームを終える時間を自分で意識するようになった。
昼食を一緒に食べる日が増えた。
時々外へ出るようになった。
家族との会話も増えた。
そしてある日、息子が言いました。
「明日、もうちょっと早く起きてみようかな。」
🔴 保護者
「何時くらい?」
「十時くらい。」
お母さんは少し笑いました。
以前なら、
「十時でも遅いでしょう。」
と思っていたかもしれません。
でも今は違います。
🔴 保護者
「いいね。やってみようか。」
翌朝。
息子が起きてきたのは十時二十分でした。
🔴 保護者
「おはよう。」
「二十分遅れた。」
🔴 保護者
「でも、昨日より早いね。」
「うん。」
それで十分でした。
親が「理想」と比べなくなる
後日、お母さんは講師にこう話しました。
🔴 保護者
「前は、学校へ行っていた頃の生活と比べてばかりいました。」
🔵 講師
「今はどうですか。」
🔴 保護者
「昨日より少し変わったかを見るようになりました。」
「まだ遅い。」
「まだできていない。」
ではなく、
「前より少し早い。」
「前より少し動けた。」
と見るようになりました。」
🔵 講師
「それは大きな変化ですね。」
🔴 保護者
「不思議なんですけど、私が細かく言わなくなってから、本人の方が少し考えるようになりました。」
🔵 講師
「自分の生活を自分で考えられる余裕が出てきたのかもしれませんね。」
生活リズムが整ったからといって、すぐ学校へ行く必要はない
ある朝。
息子が九時半に起きてきました。
お母さんは驚きました。
以前なら、そこで、
「今日は学校へ行ってみる?」
と聞いていたかもしれません。
でも今回は聞きませんでした。
🔴 保護者
「おはよう。」
「今日ちょっと早かった。」
🔴 保護者
「そうだね。」
それだけでした。
息子は朝食代わりにパンを食べ、しばらくリビングにいました。
生活が少し整い始めたからといって、それをすぐ登校に結びつけない。
そのことが、息子にとっても安心につながっていました。
おわりに
不登校になると、生活リズムが崩れることがあります。
朝起きられない。
昼まで眠る。
夜になると元気になる。
ゲームやスマホの時間が増える。
保護者は焦ります。
そして、
「明日から早く起きよう。」
「ゲームは何時まで。」
「昼間は寝ない。」
「勉強もしよう。」
と、一度に全部変えたくなります。
しかし、生活リズムは一気に元へ戻すものではありません。
まずは、今の生活の中で一つだけ変えられそうなことを探す。
ゲームを少し早く終える。
昼食を一緒に食べる。
起きたらカーテンを開ける。
少し外へ出る。
そんな小さな区切りをつくっていくことです。
そして、できない日があっても、
「また全部元に戻った。」
と考えないこと。
昨日より少し早く寝られた。
今日は少し早く起きられた。
一度外へ出られた。
その変化を積み重ねていけばいいのです。
大切なのは、生活リズムを整えることを、
「学校へ戻るための訓練」
にしないことです。
まずは、
眠る。
食べる。
起きる。
動く。
休む。
という基本的な生活を、自分の力で少しずつ取り戻していく。
その土台が整ってくると、心にも少しずつ余裕が生まれます。
そしてその余裕の中から、
「少し勉強してみようかな。」
「外へ出てみようかな。」
「誰かと話してみようかな。」
という気持ちが出てくることがあります。
生活リズムを整えるということは、学校仕様の一日に戻すことではありません。
その子がもう一度、自分の生活を自分で動かせる感覚を取り戻していくことです。
その小さな積み重ねが、次の一歩へ進むための確かな土台になっていくのです。
理論編はこちらから
⑭ 毎日の生活リズムを整えるコツ(理論編)
はじめに 子どもが学校へ行けなくなると、保護者が心配することの一つが「生活リズム」です。 朝になっても起きてこない。 昼近くになってようやく起きる。 昼間はあまり活動しない。 夜になると元気になる。 ゲームや動画を見てい […]
学校に行けないお子さんのための家庭教師
不登校のお子さんのことで悩まれている方からのご相談が増えています。
無理に勉強を始める必要はありません。
まずは今の状況をお聞かせください。
【ご相談の流れ】
① メール・電話・LINEでご相談
② 現在の状況をヒアリング
③ お子さんに合った進め方をご提案
※ご相談だけでも大丈夫です
※無理な勧誘は一切ありません



