⑤子どもが親に本音を話せなくなる理由(理論編)
- 1. はじめに
- 2. 1.子どもが本音を話せないのには理由がある
- 2.1. 自分でも理由が分からないことがある
- 2.2. 親を心配させたくないという気持ち
- 2.3. 話したあとに何が起きるか分からない
- 3. 2.親の何気ない言葉が本音を遠ざけることがある
- 3.1. 正しいことを言っていても、子どもには負担になる
- 3.2. 質問が続くと、尋問のように感じることがある
- 3.3. 親の期待を感じると、答えを合わせてしまう
- 4. 3.本音を話せる関係には「安心」が必要
- 4.1. 話した内容をすぐ評価しない
- 4.2. 話さない自由も尊重する
- 4.3. 本音を話しても、すぐ何かを決めなくていい
- 5. 4.親子の会話を取り戻すためにできること
- 5.1. 学校の話だけが会話になっていないか確認する
- 5.2. 子どもの言葉を最後まで聞く
- 5.3. 親が間違えたときには、伝え直してもいい
- 6. 5.本音を話してもらうことを、最終目標にしない
- 6.1. 話すことが苦手な子どももいる
- 6.2. 親以外の人に話せることも大切
- 6.3. 大切なのは「話してくれた量」ではなく「安心できる関係」
- 7. 最後に
- 7.1.1. 実際の例はこちらから
はじめに
「何かあったら、何でも話してね」
子どもが小さいころから、そう伝えてきた保護者は多いのではないでしょうか。
困ったことがあったら相談してほしい。
学校で嫌なことがあったら教えてほしい。
一人で悩まず、親を頼ってほしい。
それは、子どもを大切に思うからこその願いです。
しかし、不登校になった子どもに、
「学校で何かあったの?」
「どうして行けなくなったの?」
「何が嫌なのか教えてくれない?」
と尋ねても、なかなか答えてくれないことがあります。
「別に」
「分からない」
「何でもない」
そんな短い返事ばかりが続くと、保護者は不安になります。
何か重大な問題を隠しているのではないか。
親のことを信用していないのではないか。
自分の育て方が悪かったのではないか。
そう考えてしまうこともあるでしょう。
しかし、子どもが親に本音を話せないことには、さまざまな理由があります。
親を嫌っているからとは限りません。
親を信頼していないからとも限りません。
むしろ、親を大切に思っているからこそ、話せなくなっている場合もあります。
また、子ども自身が自分の気持ちを整理できておらず、何をどう説明すればよいのか分からないこともあります。
今回は、子どもが親に本音を話せなくなる理由を整理し、親子の会話を少しずつ取り戻すために大切な考え方を解説します。
1.子どもが本音を話せないのには理由がある
自分でも理由が分からないことがある
保護者が不登校の理由を知りたいと思うのは自然なことです。
原因が分かれば、何か対策ができるかもしれません。
友達とのトラブルなら学校に相談できる。
勉強が難しいなら学習支援を考えられる。
先生との関係が負担なら、学校側に配慮をお願いできる。
そう考えるからこそ、
「どうして学校へ行けないの?」
と尋ねたくなるのです。
しかし、子ども自身が理由を説明できないことがあります。
朝になると体が重くなる。
学校のことを考えると涙が出る。
教室に入ろうとすると不安になる。
けれど、なぜそうなるのかは分からない。
不登校には、一つの出来事だけでなく、複数の要因が関係している場合があります。
学習のつまずき、人間関係、疲労、生活環境、心身の不調などが重なっていることもあります。
そのため、子どもが「分からない」と答えたとき、それは必ずしも話すことを拒否しているわけではありません。
本当に分からないのかもしれないのです。
そこで何度も理由を尋ねられると、子どもは答えられない自分を責めてしまうことがあります。
「分からない」という言葉も、今の子どもの状態を表す大切な返事として受け止めることが必要です。
親を心配させたくないという気持ち
子どもは、親が思っている以上に親の様子を見ていることがあります。
学校から電話が来たあと、親がため息をついている。
夜遅くまで不登校について調べている。
家族と自分のことで話し合っている。
そうした姿を見て、
「自分のせいで親が困っている」
と感じる子どももいます。
その状態で、
「本当は学校が怖い」
「もう教室に入りたくない」
と話せば、親をさらに悲しませるのではないか。
そう考えて、本音を隠すことがあります。
親を信頼していないのではなく、親を傷つけたくないから話せない。
そんな場合もあるのです。
保護者にとっては意外かもしれません。
しかし、子どもが親の気持ちを気遣い、自分の苦しさを後回しにしていることもあります。
話したあとに何が起きるか分からない
子どもが本音を話すことをためらう理由の一つに、話したあとの反応への不安があります。
例えば、
「学校へ行くのが怖い」
と話したとします。
すると保護者が、
「じゃあ先生に相談しよう」
「別室登校ならできる?」
「明日は少しだけ行ってみる?」
と提案する。
どれも、子どもを助けたいという気持ちから出た言葉でしょう。
しかし、子どもはただ気持ちを聞いてほしかったのかもしれません。
話した途端に次の行動を求められると、
「本当のことを言うと、また何かしなければいけなくなる」
と感じる場合があります。
その経験が重なると、子どもは本音を話すこと自体を避けるようになることがあります。
2.親の何気ない言葉が本音を遠ざけることがある
正しいことを言っていても、子どもには負担になる
保護者は、子どもの将来を考えて助言します。
「勉強は続けたほうがいいよ」
「生活リズムを整えよう」
「学校の先生にも相談してみよう」
これらは、内容として必ずしも間違っていません。
しかし、子どもが苦しさを話した直後に助言を重ねると、本人は、
「自分の気持ちは聞いてもらえなかった」
と感じることがあります。
例えば、子どもが、
「学校へ行くのが嫌だ」
と言ったとき、
「でも、勉強は大事でしょう」
と返す。
親は将来を心配しているだけかもしれません。
しかし、子どもには、
「嫌だと思う自分が間違っている」
と伝わる場合があります。
大切なのは、正しい助言をすることよりも、まず子どもが何を伝えようとしているのかを理解することです。
質問が続くと、尋問のように感じることがある
子どもが少し話し始めると、保護者は詳しく知りたくなります。
「いつから?」
「誰に何か言われたの?」
「先生には話した?」
「どうしてそのとき言わなかったの?」
「ほかにも何かあった?」
一つひとつの質問には理由があります。
しかし、短時間に質問が続くと、子どもは答えることに疲れてしまいます。
特に、まだ気持ちが整理できていないときには、質問されるほど何を話せばよいか分からなくなることがあります。
会話は、情報を集めるためだけのものではありません。
子どもが安心して気持ちを出せる時間でもあります。
質問を一つしたら、返事を待つ。
答えがなければ、無理に聞き出さない。
話してくれたことを、まずそのまま受け止める。
こうした関わり方が大切です。
親の期待を感じると、答えを合わせてしまう
保護者が、
「少しずつ学校へ戻れたらいいね」
と言ったとき、子どもが、
「うん」
と答えることがあります。
しかし、その返事が必ずしも本人の本当の希望とは限りません。
親を安心させたい。
これ以上話を長くしたくない。
反対すると怒られるかもしれない。
そうした気持ちから、親が望む答えを選んでいる場合もあります。
もちろん、すべての返事を疑う必要はありません。
ただし、子どもが「うん」と答えたからといって、すぐに登校の予定を決めるのではなく、
「今すぐ決めなくてもいいよ」
と伝える余地を残すことが大切です。
3.本音を話せる関係には「安心」が必要
話した内容をすぐ評価しない
子どもが本音を話したとき、保護者はさまざまな感情を抱くことがあります。
「学校へ行きたくない」
と言われれば、不安になるでしょう。
「勉強したくない」
と言われれば、将来が心配になるかもしれません。
「先生が嫌い」
と言われれば、理由を確かめたくなることもあります。
しかし、子どもが話してくれた直後に、
「そんなこと言わないの」
「それは考えすぎだよ」
「でも、頑張らないと」
と返してしまうと、子どもは話しにくくなることがあります。
まずは、
「そう感じているんだね」
「それはつらかったね」
「話してくれてありがとう」
と、気持ちを受け止めることが大切です。
これは、子どもの考えをすべて正しいと認めることではありません。
その子が今、そう感じているという事実を大切にすることです。
話さない自由も尊重する
親子だからといって、子どもがすべてを話さなければならないわけではありません。
思春期になると、自分の気持ちを親に知られたくないこともあります。
また、まだ言葉にできない気持ちもあるでしょう。
そのため、
「今は話したくない」
と言われたときには、
「分かった。話したくなったら聞くよ」
と伝える方法があります。
大切なのは、そこで関心まで失わないことです。
話さないからといって無視するのではなく、普段の生活の中で自然な関わりを続けます。
食事のこと。
好きな動画のこと。
最近気になっていること。
学校とは関係のない話題も、親子の関係を保つために役立ちます。
本音を話しても、すぐ何かを決めなくていい
子どもが、
「学校へ戻るのが怖い」
と話してくれたとします。
そのとき、保護者はすぐに対策を考えたくなるかもしれません。
しかし、最初の会話で結論を出す必要はありません。
「怖いと思っているんだね」
「どんなところが怖いか、話せるときに教えてね」
「必要なら一緒に考えよう」
そう伝えるだけでも、子どもが安心する場合があります。
もちろん、いじめや安全に関わる問題、心身の不調が強い場合などには、早めの対応が必要です。
ただし、その場合でも、子どもの気持ちを無視して一方的に進めるのではなく、可能な範囲で本人に説明しながら支援につなげることが大切です。
4.親子の会話を取り戻すためにできること
学校の話だけが会話になっていないか確認する
不登校になると、親子の会話が学校中心になりやすくなります。
「今日は学校から連絡があったよ」
「宿題はどうする?」
「明日はどうする?」
「先生と話してみる?」
こうした会話ばかりになると、子どもは親と話すこと自体を負担に感じる場合があります。
そこで、一度振り返ってみましょう。
最近、学校と関係のない話をしたでしょうか。
子どもの好きなことについて聞いたでしょうか。
一緒に笑った時間はあったでしょうか。
学校の問題を解決することは大切です。
しかし、親子の関係は学校のためだけにあるわけではありません。
学校へ行けない日も、親子として普通に話せる時間を持つことが大切です。
子どもの言葉を最後まで聞く
子どもが話し始めたとき、途中で結論を出さないように意識してみましょう。
例えば、
「今日、友達から連絡が来たんだけど……」
と言われたとします。
保護者は、
「よかったね。学校のことを聞いてみたら?」
と返したくなるかもしれません。
しかし、子どもが話そうとしていたのは、友達との何気ないやり取りだったかもしれません。
そこで学校の話につなげてしまうと、子どもは話をやめてしまう場合があります。
まずは、
「そうなんだ。どんな話だったの?」
と聞いてみる。
そして、子どもが話したいところまで聞く。
その積み重ねが、安心して話せる関係につながります。
親が間違えたときには、伝え直してもいい
親も人間です。
心配のあまり、強い言葉をかけてしまうことがあります。
子どもの話を最後まで聞かずに、助言してしまうこともあるでしょう。
そのようなときには、
「さっきは最後まで聞かずに話してしまったね」
「心配で、言いすぎたと思う」
「話してくれていたのに、ごめんね」
と伝え直すことができます。
親が間違いを認めることは、親としての立場を失うことではありません。
むしろ、子どもにとって、
「自分の気持ちを大切にしてくれている」
と感じるきっかけになる場合があります。
一度うまく話せなかったからといって、親子関係がすべて決まるわけではありません。
何度でも、関わり方を見直すことができます。
5.本音を話してもらうことを、最終目標にしない
話すことが苦手な子どももいる
子どもによっては、自分の気持ちを言葉にすることが苦手な場合があります。
言葉にしようとすると混乱する。
質問されると緊張する。
自分でも何を感じているのか分からない。
そのような子どもに、
「本音を話してくれないと分からない」
と繰り返すことは、負担になる場合があります。
会話だけが気持ちを伝える方法ではありません。
紙に書く。
メッセージで伝える。
選択肢の中から選ぶ。
少し時間を置いてから話す。
学校や家庭以外の信頼できる大人に相談する。
子どもに合った方法を探すことも大切です。
親以外の人に話せることも大切
子どもが親には話せなくても、学校の先生やスクールカウンセラー、家庭教師などには話せる場合があります。
それは、親子関係が悪いことを意味するとは限りません。
親だからこそ話しにくいこともあるのです。
保護者としては、少し寂しく感じるかもしれません。
しかし、子どもが安心して話せる相手を持つことは、大切な支えになります。
そのため、親がすべてを聞き出そうとする必要はありません。
子どもが信頼できる相手とつながれるようにすることも、保護者の役割です。
ただし、相談内容の秘密を守ることと、安全を守ることの両立は必要です。
自傷や虐待、深刻ないじめなど安全に関わる問題がある場合には、適切な専門機関との連携が優先されます。
大切なのは「話してくれた量」ではなく「安心できる関係」
子どもが本音を話してくれるようになると、保護者は安心するかもしれません。
しかし、話す量が増えたから必ず回復しているとは限りませんし、話さないから状態が悪いとも限りません。
大切なのは、子どもが、
「話したいときに話せる」
「話したくないときは無理に聞かれない」
「困ったときには相談できる」
と感じられることです。
親子の会話を取り戻すことは、子どもからすべての本音を聞き出すことではありません。
安心して過ごせる関係をつくることです。
そして、その関係があることで、子どもが必要なときに助けを求めやすくなります。
最後に
子どもが親に本音を話せなくなる理由は、一つではありません。
自分でも気持ちが分からないことがあります。
親を心配させたくないこともあります。
話したあとに何かを求められるのが怖い場合もあります。
また、思春期の子どもにとって、親にすべてを話したくないという気持ちも自然なものです。
だからこそ、保護者が目指したいのは、子どもの本音を無理に聞き出すことではありません。
話したいときに話せる関係をつくることです。
学校の話だけでなく、何気ない日常の会話を大切にする。
子どもの言葉を途中で遮らない。
話してくれたことをすぐ評価しない。
答えられないときには、無理に答えを求めない。
そして、必要に応じて、親以外の相談相手につながれるようにする。
そうした小さな関わり方の積み重ねが、親子の信頼関係を支えます。
「どうすれば本音を話してくれるだろう」ではなく、「この子が安心して話せるために、私は何ができるだろう」と考える。
その視点の変化が、親子の会話を取り戻すための大切な第一歩になるのです。
実際の例はこちらから
⑤子どもが親に本音を話せなくなる理由(実践編)
事例プロフィール はじめに 「何を聞いても、『別に』『分からない』しか言わないんです」 不登校の子どもを持つ保護者から、こうした悩みを聞くことがあります。 学校で何かあったのではないか。 友達との関係に問題があったのでは […]
学校に行けないお子さんのための家庭教師
不登校のお子さんのことで悩まれている方からのご相談が増えています。
無理に勉強を始める必要はありません。
まずは今の状況をお聞かせください。
【ご相談の流れ】
① メール・電話・LINEでご相談
② 現在の状況をヒアリング
③ お子さんに合った進め方をご提案
※ご相談だけでも大丈夫です
※無理な勧誘は一切ありません



