② 子どもを変えようとする前に、親ができること(理論編)
- 1. はじめに
- 2. 1.「子どもを変えなければ」という気持ちに気づく
- 2.1. 親が変えようとするのは、子どもを心配しているから
- 2.2. 「正しいこと」が今必要とは限らない
- 3. 2.子どもの行動より先に「状態」を見る
- 3.1. 「できない」と「やらない」は違う
- 3.2. 行動を変える前にエネルギーを回復させる
- 4. 3.親が変えられるのは「子ども」ではなく「環境」
- 4.1. 子どもの気持ちは直接操作できない
- 4.2. 「評価されない時間」をつくる
- 5. 4.子どもの「小さな変化」を見つける
- 5.1. 大人が求める一歩は大きすぎることがある
- 5.2. 小さな変化をすぐ次の課題につなげない
- 6. 5.親自身が「待てる状態」をつくる
- 6.1. 子どもだけでなく、親にも支えが必要
- 6.2. 「親が変われば子どもが必ず変わる」と考えすぎない
- 7. まとめ
- 7.1.1. 実際の例はこちらから
はじめに
子どもが学校へ行けなくなると、保護者はどうしても、
「何とか学校へ行けるようにしなければ」
「生活リズムを戻さなければ」
「勉強をさせなければ」
と考えます。
それは、子どもの将来を心配しているからこそ生まれる気持ちです。
しかし、不登校の状態にある子どもに対して「変わってほしい」という気持ちが強くなりすぎると、親子関係が苦しくなることがあります。
子ども自身も、
「学校へ行かなければいけない」
「勉強しなければいけない」
「このままではいけない」
と分かっていることが少なくありません。
分かっているけれど、動けない。
そんな状態の子どもにさらに「変わりなさい」というメッセージを送り続けると、自分を責める気持ちが強くなる場合があります。
では、親は何もできないのでしょうか。
そうではありません。
子どもを直接変えようとする前に、親だからこそできることがあります。
それは、子どもが自分から動き始められる環境を整えることです。
1.「子どもを変えなければ」という気持ちに気づく
親が変えようとするのは、子どもを心配しているから
不登校になった子どもを前にすると、保護者の頭にはさまざまな不安が浮かびます。
「このままずっと学校へ行けなかったらどうしよう」
「勉強についていけなくなるのではないか」
「高校へ進学できるのだろうか」
「将来、仕事ができるのだろうか」
こうした不安が大きくなるほど、
「早く元の状態に戻さなければ」
という気持ちも強くなります。
その結果、
「明日は学校へ行ける?」
「少しだけでも勉強したら?」
「昼まで寝ていたら生活リズムが戻らないよ」
といった言葉が増えていきます。
しかし、ここで一度考えてみる必要があります。
その言葉は、今の子どもに必要な言葉でしょうか。
それとも、親自身の不安を小さくするために出ている言葉でしょうか。
親が自分の気持ちに気づくだけでも、子どもへの接し方は変わります。
「正しいこと」が今必要とは限らない
学校へ行くこと。
生活リズムを整えること。
勉強すること。
どれも間違ったことではありません。
むしろ長い目で見れば、大切なことです。
しかし、正しいことと、今その子に必要なことは必ずしも同じではありません。
心身ともに疲れている子どもに、
「朝7時に起きなさい」
「毎日2時間は勉強しなさい」
と求めても、それを実行できる状態でなければ苦しさが増えるだけです。
大切なのは、
「何をさせるべきか」
ではなく、
「今、この子は何ができる状態なのか」
を見ることです。
2.子どもの行動より先に「状態」を見る
「できない」と「やらない」は違う
不登校の子どもを見ていると、
「学校へ行かない」
「勉強しない」
「朝起きない」
「外へ出ない」
という行動が目につきます。
すると大人は、
「やろうとしていない」
と考えてしまうことがあります。
しかし、
「やらない」と「できない」は違います。
本人も学校へ行きたいと思っている。
勉強しなければならないことも分かっている。
生活リズムを戻したいと思っている。
それでも体や心が動かないことがあります。
その状態で、
「やる気を出しなさい」
と言われても、子どもはさらに、
「自分はダメなんだ」
と感じてしまうかもしれません。
行動を変える前にエネルギーを回復させる
疲れている人に必要なのは、最初から大きな行動を求めることではありません。
まず、動くためのエネルギーを回復させることです。
安心して眠れる。
食事ができる。
好きなことを楽しめる。
家族と少し話せる。
自分の部屋からリビングへ出てこられる。
外へ少し出られる。
こうした変化は、一見すると学校とは関係がないように見えます。
しかし、子どもが次に動き始めるための大切な土台になります。
学校へ行けたかどうかだけで一日を評価しないことが重要です。
3.親が変えられるのは「子ども」ではなく「環境」
子どもの気持ちは直接操作できない
親であっても、子どもの気持ちそのものを変えることはできません。
「学校を好きになりなさい」
と言って、好きにさせることはできません。
「不安にならなくていい」
と言って、不安を消すこともできません。
「やる気を出しなさい」
と言って、やる気を生み出すこともできません。
しかし、子どもを取り巻く環境は変えることができます。
たとえば、
「今日は学校へ行くの?」
と毎朝確認していたなら、その質問を少し減らす。
学校の話ばかりになっていたなら、学校と関係のない会話を増やす。
勉強の遅れを毎日指摘していたなら、まず生活の中の小さな変化を見る。
それだけでも、家庭の空気は変わります。
「評価されない時間」をつくる
不登校の子どもは、日常の中で自分を評価していることがあります。
「今日も学校へ行けなかった」
「また勉強できなかった」
「みんなは普通に学校へ行っている」
「自分だけ何もしていない」
そこへ家族から、
「今日は何したの?」
「勉強した?」
「明日は学校へ行く?」
と確認され続けると、家庭でも評価されているように感じることがあります。
だからこそ、家庭には、
何かができなくても一緒にいられる時間
が必要です。
一緒に食事をする。
テレビを見る。
好きなゲームについて話す。
散歩へ行く。
何気ない会話をする。
そこに「学校へ行くため」という目的をつけなくても構いません。
子どもにとって家庭が、
「できたか、できなかったかを評価される場所」
ではなく、
「そのままでいられる場所」
になることが大切です。
4.子どもの「小さな変化」を見つける
大人が求める一歩は大きすぎることがある
親が考える「前進」は、
「学校へ行った」
「勉強を再開した」
「生活リズムが戻った」
といった分かりやすい変化になりがちです。
しかし、子どもにとっては、その前にいくつもの段階があります。
昨日より少し早く起きた。
家族と一緒に朝食を食べた。
自分から話しかけた。
外へ出てみた。
学校について少し話した。
教科書を開いた。
こうした一つひとつも前進です。
小さな変化を見るようになると、
「何も変わっていない」
という親の焦りも少しずつ減っていきます。
小さな変化をすぐ次の課題につなげない
ここで注意したいことがあります。
子どもが一歩動いたとき、それをすぐ次の課題につなげないことです。
たとえば子どもが外へ出られたとき、
「外に出られるなら学校にも行けるんじゃない?」
と言う。
教科書を開いたとき、
「じゃあ今日は2時間勉強しよう」
と言う。
学校の話をしたとき、
「じゃあ明日は行ってみる?」
と言う。
これを繰り返すと、子どもは、
「何かできると、次を求められる」
と感じるようになることがあります。
まずは、
「今日は外に出られた」
「自分から勉強しようと思えた」
という一歩を、そのまま認めることが大切です。
次へ進むタイミングは、そのあと考えればいいのです。
5.親自身が「待てる状態」をつくる
子どもだけでなく、親にも支えが必要
不登校になると、周囲からは子どもの状態ばかりを聞かれることがあります。
「最近どう?」
「学校行けそう?」
「原因は分かった?」
しかし、毎日子どもと向き合っている保護者自身も疲れています。
「自分の育て方が悪かったのではないか」
「もっと早く気づけばよかった」
「この対応で本当に合っているのだろうか」
そんな不安を一人で抱えていると、どうしても子どもの変化を急ぎたくなります。
だからこそ、保護者自身にも相談できる相手が必要です。
学校。
スクールカウンセラー。
支援機関。
医療機関。
家庭教師や学習支援者。
信頼できる家族や知人。
一人ですべてを抱える必要はありません。
「親が変われば子どもが必ず変わる」と考えすぎない
もう一つ、大切なことがあります。
「親が変われば、子どもも変わる」
という言葉を、必要以上に背負わないことです。
親の関わり方が変わることで、家庭の雰囲気が変わることはあります。
子どもが安心して話せるようになることもあります。
しかし、
「子どもが学校へ行けないのは、自分の対応が悪いからだ」
と考える必要はありません。
子どもの状態には、さまざまな要因が関係しています。
親ができるのは、子どもを思い通りに変えることではありません。
子どもが自分の力で次の一歩を選びやすい環境をつくることです。
まとめ
子どもが学校へ行けなくなると、
「何とか変えなければ」
と思うのは自然なことです。
しかし、子どもが疲れて動けなくなっているとき、最初に必要なのは大きな変化ではありません。
まず、
「学校へ行けたか」
「勉強できたか」
だけで子どもを見ないこと。
そして、
「今、どんな状態なのだろう」
「何ならできそうなのだろう」
と考えることです。
子どもを直接変えることはできません。
でも、家庭での言葉や接し方、安心できる環境は変えることができます。
そして、子どもに小さな変化が見えたときには、すぐに次の課題を与えるのではなく、その一歩をそのまま受け止める。
子どもを変えようとする前に、子どもが自分から動き始められる環境をつくる。
それが、不登校の子どもと向き合う保護者にできる、大切な支援の一つです。
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