⑬ 学校との距離感の作り方(理論編)

はじめに

子どもが学校へ行けなくなると、保護者は「学校とどう関わればいいのか」という新しい問題に直面します。

担任の先生から電話が来る。

プリントが届く。

クラスメートから連絡が来る。

学校から、

「一度、顔だけでも出してみませんか。」

「放課後に来てみませんか。」

と提案されることもあります。

学校とのつながりを完全になくしてしまうのは不安です。

一方で、学校から連絡が来るたびに子どもの表情が曇る。

先生の名前を聞くだけで部屋へ戻ってしまう。

「明日は来られそう?」と聞かれることが負担になる。

そんなこともあります。

そこで難しいのが、

「学校との距離をどのくらいにすればよいのか」

という問題です。

近過ぎれば、子どもにとってプレッシャーになることがあります。

しかし、遠ざけ過ぎれば、必要な情報や支援につながりにくくなることもあります。

大切なのは、

「学校へ近づけるか、学校から離すか」

という二択ではありません。

その時の子どもの状態に合わせて、学校との距離を調整していくことです。

不登校の期間中も、その距離は一定である必要はありません。

今は連絡を減らす。

少し元気になったら情報だけ受け取る。

本人が興味を示したら、学校との接点を少し増やす。

そのように、子どもの状態に合わせて変えていくことができます。

学校との距離に「正解」は一つではない

不登校になると、

「学校とのつながりは切らない方がいい。」

と言われることがあります。

確かに、つながりを残しておくことが役立つ場合はあります。

しかし、それを「できるだけ学校と接触させた方がよい」と考える必要はありません。

子どもによって必要な距離は違う

例えば、担任の先生から週に一度電話が来ることを、

「先生が気にしてくれている。」

と安心する子もいます。

一方で、

「また学校へ来いと言われるのではないか。」

と緊張する子もいます。

友達からのLINEがうれしい子もいれば、クラスの様子を知ることで苦しくなる子もいます。

つまり、

同じ関わり方でも、子どもによって意味が違うのです。

「一般的にはどうするべきか」だけで決めるのではなく、実際にその関わりをした後の子どもの様子を見ることが重要です。

学校との関わりの後を見る

判断材料の一つになるのが、学校と接触した後の状態です。

例えば先生から電話があった後、

表情が明るくなった。

「先生、こんなこと言ってた。」

と話した。

少し学校について考えられるようになった。

こうした様子があれば、その関わりは本人にとって比較的負担が少ない可能性があります。

反対に、

その後ずっと部屋から出てこない。

食欲が落ちる。

眠れなくなる。

翌朝の体調が大きく崩れる。

こうした変化が続くなら、今は学校との接触が強過ぎる可能性があります。

重要なのは、

「学校と接触できたか」ではなく、「接触した後どうなったか」

を見ることです。

距離を取ることは「学校を諦めること」ではない

保護者の中には、

「今ここで学校から離したら、二度と戻れなくなるのではないか。」

と心配する方もいます。

しかし、距離を取ることと、学校との関係を終わらせることは別です。

今は負担が大きいから少し離れる。

落ち着いてきたら、また関わり方を考える。

それで構いません。

学校との距離は、固定するものではなく、調整していくものだからです。

学校との連絡は「子ども本人」と「保護者」を分けて考える

学校との距離を考える時に重要なのが、

「保護者が学校とつながること」と「子ども本人が学校と接触すること」を分けることです。

この二つは同じではありません。

保護者が窓口になってもいい

子どもが先生との電話を負担に感じているなら、無理に本人へ電話を代わる必要はありません。

保護者が連絡窓口になり、

「今は本人への直接の電話は控えてください。」

と学校へ伝えることもできます。

必要な情報は保護者が受け取り、本人に伝える必要があるものだけを整理する。

そうすることで、学校とのつながりを残しながら、子どもの負担を減らすことができます。

学校からの情報を全部そのまま伝えなくてもいい

学校から、

「来週テストがあります。」

「行事の参加をどうしますか。」

「そろそろ進路について考えましょう。」

といった連絡が来ることがあります。

その情報を受け取った瞬間、すべて子どもへ伝えなければならないとは限りません。

もちろん、本人の判断が必要な重要事項は伝える必要があります。

しかし、今すぐ伝えなくても問題のない情報なら、子どもの状態を見てタイミングを考えることもできます。

保護者は単なる「学校から子どもへの伝言係」ではありません。

子どもが受け止められる状態かを考えながら、学校との間を調整する役割を持つこともできます。

本人の希望を確認する

少し会話ができる状態なら、

「先生からの連絡、どうしたら一番楽?」

と聞いてみてもよいでしょう。

「電話は嫌。」

「LINEみたいに文章ならいい。」

「お母さんだけ聞いて。」

「学校の話は週末だけにしてほしい。」

子ども自身から具体的な希望が出てくることがあります。

自分に関することを自分の意見も含めて決められることは、安心感にもつながります。

「学校へ戻すための接点」にしない

学校との関わりで注意したいのは、すべての接点を登校につなげようとしないことです。

先生と話せたからといって次を急がない

例えば、久しぶりに子どもが担任の先生と電話で話せたとします。

保護者はうれしくなります。

そして、

「先生と話せたんだから、次は学校へ行ってみようか。」

と言いたくなるかもしれません。

しかし、子どもにとっては、

「先生と電話で話す」

という一歩と、

「学校へ行く」

という一歩の大きさがまったく違うことがあります。

一つできたからといって、すぐ次を求めないことが大切です。

「できたこと」を次の条件にしない

放課後に学校へ行けた。

校門まで行けた。

先生と話せた。

友達に会えた。

その時、

「今日はここまでできたね。」

で終わってもいいのです。

ところが、

「今日は校門まで行けたから、明日は教室まで行こう。」

となると、子どもは、

「一度できたら次を求められる。」

と感じるようになります。

すると、最初の一歩そのものを避けるようになることがあります。

小さな接点は、小さな接点のまま終わらせてもいいのです。

学校とつながる目的を変える

学校との接点を、

「登校させるため」

だけに考えないことも大切です。

必要な情報を受け取る。

安心できる先生との関係を残す。

教材を受け取る。

進路について相談する。

本人が学校について話したくなった時に話せる場所を残す。

学校との関係には、登校以外にもさまざまな意味があります。

「学校とつながっている=学校へ行かなければならない」

ではありません。

この感覚を本人も持てるようになると、学校との関わりに対する緊張が下がることがあります。

学校と家庭は「子どもを動かす」のではなく「支える」ために協力する

不登校の支援では、家庭と学校が対立してしまうことがあります。

家庭は、

「学校が無理をさせる。」

と感じる。

学校は、

「家庭が休ませ過ぎているのではないか。」

と考える。

しかし、この状態では、最も苦しくなるのは子どもです。

学校に家庭での様子を具体的に伝える

「学校へ行きたくないようです。」

だけでは、先生も状態を判断しにくいことがあります。

可能であれば、

「学校の電話があった日は、その後二時間ほど部屋から出てきません。」

「学校へ行く話をすると、前日の夜から眠れなくなります。」

「学校以外の話なら少しずつ会話が増えています。」

など、具体的な様子を伝えると状況を共有しやすくなります。

感情的に、

「学校から連絡しないでください。」

とだけ伝えるより、

「今は直接連絡があると緊張が強くなるので、しばらく保護者を窓口にしたいです。」

と伝えた方が、学校側も対応しやすくなります。

「今は何を目標にするか」を共有する

学校側は「登校」を目標に考えやすく、家庭側は「まず休ませたい」と考えることがあります。

そこで、

「今の段階では登校そのものより、生活を少し落ち着かせることを優先したい。」

「本人が学校の話をできる状態になることを当面の目標にしたい。」

など、現在の目標を共有しておくと関わり方を調整しやすくなります。

学校にお願いしてよいこともある

保護者は、

「先生に迷惑をかけてはいけない。」

と思い過ぎる必要はありません。

例えば、

本人への直接連絡を一時的に減らしてほしい。

プリント類は保護者へ渡してほしい。

クラスの様子を定期的に教えてほしい。

本人が登校する場合、人の少ない時間帯を相談したい。

必要に応じて、こうした希望を学校と話し合うことができます。

すべてが希望どおりになるとは限りませんが、子どもの状態を共有したうえで相談することには意味があります。

距離は子どもの回復に合わせて何度でも調整していい

学校との距離感で最も大切なのは、一度決めた方法を守り続けることではありません。

子どもの状態は変わります。

だから距離も変えていいのです。

「今は無理」が「ずっと無理」とは限らない

今は先生の電話に出られない。

今は学校の前まで行けない。

今はクラスメートにも会いたくない。

だからといって、それがずっと続くとは限りません。

安心して過ごせる時間が増え、心身のエネルギーが戻ってくると、

「先生と少し話してみようかな。」

「教科書だけ取りに行きたい。」

「放課後なら学校に行けるかもしれない。」

という気持ちが出てくることがあります。

その変化を待つことも大切です。

子どもから出てきた小さなサインを大切にする

「今、クラス何やってるの?」

「先生、何か言ってた?」

「部活のみんな元気?」

こうした言葉が出てきた時、保護者はうれしくなります。

しかし、

「学校が気になっている=登校したい」

とは限りません。

まずは質問されたことに答える。

「気になるなら学校へ行ってみる?」

とすぐ次へ進めない。

その方が、子どもは安心して学校について話せます。

近づいたり離れたりしてもいい

昨日は学校へ行けた。

今日は行けない。

先週は先生と話せた。

今週は話したくない。

こうしたこともあります。

回復は一直線に進むとは限りません。

一度できたことが、次にはできないこともあります。

その時、

「この前できたでしょう。」

と責めるのではなく、

「今日は難しいんだね。」

と今の状態を見ることが大切です。

学校との距離は、

近づく → 少し離れる → また近づく

という動きを繰り返しても構いません。

まとめ

不登校になった子どもと学校との距離を考える時、

「つながっていた方がいいのか。」

「いったん離れた方がいいのか。」

と迷うことがあります。

しかし、重要なのは二択で考えないことです。

学校との距離は、その子の状態によって変わります。

今は保護者だけが学校と連絡を取る。

本人への直接連絡は減らす。

少し落ち着いたら、学校の情報を本人にも伝える。

本人が希望したら先生と話す。

さらに余裕が出てきたら、放課後に学校へ行くことを考える。

そうした段階があってもいいのです。

そして、一度近づいたからといって、そのまま前へ進み続けなければならないわけではありません。

負担が大きければ、また少し距離を取ることもできます。

大切なのは、

「どうすれば学校へ戻せるか」だけを基準に距離を決めないことです。

「今、この子にとってどのくらいの距離なら安心できるだろう。」

「この関わりのあと、子どもの状態はどうだっただろう。」

そこを見ることです。

学校は、子どもを急いで戻す場所ではなく、子どもの学びや成長を支えるための場所です。

家庭もまた、学校へ行かせるためだけに存在する場所ではありません。

家庭と学校が、

「どうすればこの子を動かせるか」ではなく、「今、この子に何が必要なのか」

という視点を共有できれば、学校との関係は大きく変わります。

近過ぎず、遠過ぎず。

今の子どもが受け止められる距離を探す。

そして状態が変われば、また調整する。

その柔軟な距離感が、子どもに「学校とのつながりは、自分を追い詰めるものではない」と感じさせ、やがて本人が自分の意思で次の一歩を考えるための土台になっていくのです。

実際の例はこちらから

⑬ 学校との距離感の作り方(実践編)

はじめに 「学校とのつながりは切らない方がいいですよ。」 不登校になると、保護者がこう言われることがあります。 確かに、学校とのつながりを残しておくことには意味があります。 担任の先生から情報を受け取る。 教材やプリント […]

学校に行けないお子さんのための家庭教師

ここまで読んでいただいた方へ

不登校のお子さんのことで悩まれている方からのご相談が増えています。

無理に勉強を始める必要はありません。
まずは今の状況をお聞かせください。

【ご相談の流れ】
① メール・電話・LINEでご相談
② 現在の状況をヒアリング
③ お子さんに合った進め方をご提案


※ご相談だけでも大丈夫です
※無理な勧誘は一切ありません