④「学校へ行ってほしい」という気持ちとの向き合い方(理論編)
- 1. はじめに
- 2. 1.「学校へ行ってほしい」は自然な親の願い
- 2.1. 学校へ行ってほしい理由を整理する
- 2.2. 「学校へ行くこと」と「将来の幸せ」を同じものにしない
- 3. 2.親の願いと子どもの気持ちは違っていてもいい
- 3.1. 親は「行ってほしい」、子どもは「行けない」
- 3.2. 子どもの気持ちを受け止めることは、親の願いを捨てることではない
- 4. 3.「学校へ行ってほしい」をプレッシャーに変えない
- 4.1. 願いが要求に変わる瞬間
- 4.2. 小さな変化をすぐ登校につなげない
- 4.3. 「学校へ行けた日」だけを成功にしない
- 5. 4.学校へ行けない間にも、親ができる支援はある
- 5.1. 学校との関係を無理なく保つ
- 5.2. 学習を止めない方法を考える
- 5.3. 学校復帰だけを唯一の目標にしない
- 6. 5.親の願いを大切にしながら、子どもの未来を支える
- 6.1. 「学校へ行ってほしい」と思う自分を責めない
- 6.2. 親の希望と子どもの希望を分けて考える
- 6.3. 子どもの人生を、子ども自身が選べるようにする
- 7. 最後に
- 7.1.1. 実際の例はこちらから
はじめに
「学校へ行ってほしいと思うことは、いけないのでしょうか」
不登校の子どもを支える保護者から、こうした悩みを聞くことがあります。
子どもに無理をさせてはいけない。
焦らせてはいけない。
学校へ行くことだけを目標にしてはいけない。
そうした考え方を知るほど、保護者は自分の気持ちに迷いを感じることがあります。
「本当は学校へ行ってほしい」
「友達と楽しく過ごしてほしい」
「授業を受けて、将来の選択肢を広げてほしい」
そう願うことまで、間違っているように感じてしまうのです。
しかし、学校へ行ってほしいと願うこと自体が悪いわけではありません。
問題になるのは、その願いが子どもへの強い要求になり、今の子どもの状態や気持ちが見えなくなってしまうことです。
保護者には保護者の願いがあります。
子どもには子どもの苦しさや希望があります。
その二つは、必ずしも最初から一致するわけではありません。
大切なのは、どちらか一方の気持ちを消すことではなく、両方を大切にしながら、今できることを探していくことです。
1.「学校へ行ってほしい」は自然な親の願い
学校へ行ってほしい理由を整理する
保護者が学校へ行ってほしいと思う理由は、一つではありません。
友達と関わってほしい。
勉強が遅れないようにしてほしい。
集団生活を経験してほしい。
高校や大学へ進学できるようにしてほしい。
将来、社会の中で自立して生活してほしい。
こうした願いの多くは、子どもの幸せを考えるところから生まれています。
しかし、ここで一つ考えてみたいことがあります。
保護者が本当に願っているのは、学校という建物に毎日通うことでしょうか。
それとも、学校生活を通して得られる学びや経験、将来の可能性でしょうか。
もちろん、学校に通うことには大きな意味があります。
友達と過ごす時間や、先生との関わり、集団で学ぶ経験は、学校だからこそ得やすいものです。
一方で、学校へ通えない期間があっても、学習や人とのつながりを完全に諦める必要はありません。
家庭学習、訪問型の学習支援、教育支援センター、オンライン学習など、状況に応じて検討できる方法があります。
「学校へ行ってほしい」という願いの奥にある、本当に大切にしたいことを整理する。
それが、親自身の気持ちと向き合う第一歩になります。
「学校へ行くこと」と「将来の幸せ」を同じものにしない
学校へ行けない日が続くと、保護者は将来のことまで不安になります。
「このまま高校へ行けなかったらどうしよう」
「社会に出られなくなるのではないか」
「将来、自立できなくなるのではないか」
こうした不安は、子どもの現在の状態と、何年も先の未来を一つにつなげてしまうことから強くなる場合があります。
しかし、不登校になったからといって、その子の将来が決まるわけではありません。
学校へ戻る子どももいます。
別の学び方を選ぶ子どももいます。
進学先で新しい生活を始める子どももいます。
大切なのは、今の状態だけで将来の可能性を狭めないことです。
学校への復帰を希望することと、別の選択肢も知っておくことは矛盾しません。
どちらも、子どもの将来を守るための準備なのです。
2.親の願いと子どもの気持ちは違っていてもいい
親は「行ってほしい」、子どもは「行けない」
保護者が、
「学校へ行ってほしい」
と思っている一方で、子どもは、
「行きたいけれど行けない」
と感じている場合があります。
また、
「今は学校へ行きたくない」
「教室に入るのが怖い」
「学校のことを考えるだけでつらい」
と感じている子どももいます。
ここで大切なのは、親と子どもの気持ちを無理に一致させようとしないことです。
保護者が学校へ行ってほしいと思っていても、子どもが今すぐ登校できるとは限りません。
逆に、子どもが学校へ行きたくないと言っていても、その気持ちが将来まで変わらないと決まったわけではありません。
気持ちは、心身の状態や周囲の環境によって変化することがあります。
だからこそ、今の気持ちをそのまま受け止めることが大切です。
子どもの気持ちを受け止めることは、親の願いを捨てることではない
子どもが、
「学校へ行きたくない」
と言ったとき、保護者はどう答えればよいのでしょうか。
たとえば、
「そうなんだね。今は学校へ行くのがつらいんだね」
と返すことができます。
これは、学校へ行かなくてもよいと将来まで決める言葉ではありません。
今の子どもの気持ちを理解しようとする言葉です。
子どもが話してくれた気持ちを受け止めたあとで、必要に応じて、
「学校のことで困っていることがあったら、一緒に考えよう」
と伝えることもできます。
保護者が学校へ行ってほしいという願いを持ちながら、今の子どもの苦しさも大切にする。
その両立は可能です。
子どもの気持ちを認めることと、子どもの将来を諦めることは違います。
3.「学校へ行ってほしい」をプレッシャーに変えない
願いが要求に変わる瞬間
保護者が学校へ行ってほしいと願うことは自然です。
しかし、その願いが毎日の言葉になると、子どもには負担になる場合があります。
「明日は行ける?」
「来週からは頑張ろう」
「少しだけでも学校へ行ってみたら?」
「みんな待っているよ」
保護者は励ましているつもりでも、子どもは、
「早く学校へ行けるようにならなければいけない」
と感じることがあります。
特に、学校へ行けないことを本人も苦しく感じている場合には、繰り返される言葉が自分を責める材料になってしまうことがあります。
大切なのは、学校へ行くことを話題にしてはいけないということではありません。
子どもが今、その話を受け止められる状態なのかを考えることです。
そして、学校について話すときも、登校を約束させることだけを目的にしないことです。
小さな変化をすぐ登校につなげない
子どもが少し元気になってくると、保護者は期待を感じることがあります。
朝起きられるようになった。
外へ出られるようになった。
友達と連絡を取るようになった。
学校の話をするようになった。
すると、つい、
「それなら学校にも行けるんじゃない?」
と言いたくなるかもしれません。
しかし、家庭で元気に過ごせることと、学校という環境に戻れることは同じではありません。
家では安心して過ごせても、教室の人間関係や音、周囲の視線などに強い負担を感じる子どももいます。
小さな変化が見えたときには、その変化をまず受け止めることが大切です。
「外に出られたんだね」
「友達と話せたんだね」
「学校のことを教えてくれてありがとう」
その一歩をすぐ次の要求につなげないことで、子どもが自分から行動する余地を残すことができます。
「学校へ行けた日」だけを成功にしない
登校できた日は、保護者にとってうれしい日かもしれません。
しかし、学校へ行けた日だけを成功と考えると、それ以外の日はすべて失敗になってしまいます。
子どもの状態には波があります。
昨日は学校へ行けても、今日は難しいことがあります。
一度登校できたからといって、毎日続けられるとは限りません。
そのため、登校できた日には、
「学校へ行けてよかったね」
と伝えることもできますが、同時に、
「疲れなかった?」
「どんな感じだった?」
と、本人の状態にも目を向けたいところです。
学校へ行けたという結果だけでなく、その経験が子どもにとってどうだったのかを知ることが大切です。
4.学校へ行けない間にも、親ができる支援はある
学校との関係を無理なく保つ
学校へ行けない期間が続いても、学校との関係を完全に切る必要はありません。
ただし、連絡の取り方は子どもの状態に合わせて考えることが大切です。
学校から毎朝電話が来ることが負担になっているなら、連絡頻度を相談する。
担任の先生との直接のやり取りが難しければ、保護者を通して連絡する。
学校からのプリントや教材を受け取れる方法を考える。
子どもが希望したときに、別室登校や短時間の登校などが可能か相談する。
学校の状況によって利用できる方法は異なりますが、子どもを急がせずに準備できることはあります。
学校との連携は、子どもを登校させるためだけのものではありません。
今の子どもの学びや生活を支えるためにも役立ちます。
学習を止めない方法を考える
保護者が学校へ行ってほしいと思う理由の一つに、勉強の遅れがあります。
特に中学生の場合、高校入試への影響を心配する家庭も多いでしょう。
しかし、学校へ行けないからといって、学習をすべて止めなければならないわけではありません。
家庭で教科書を読む。
短時間だけ問題を解く。
オンライン教材を利用する。
訪問型の家庭教師と一緒に、分からなくなったところから学び直す。
子どもの状態に合わせて、さまざまな方法を検討できます。
ただし、学習の再開を急ぎすぎる必要はありません。
心身の疲れが強い場合には、休息や必要な相談を優先することも大切です。
学習を始めるときには、
「遅れを全部取り戻そう」
ではなく、
「今日は一問だけやってみよう」
という小さな目標から始める方法もあります。
学校復帰だけを唯一の目標にしない
不登校支援では、学校への復帰が一つの目標になることがあります。
しかし、すべての子どもにとって、同じ学校へ戻ることが最適とは限りません。
学校の環境そのものが大きな負担になっている場合には、別の学び方や進路を検討することも必要です。
たとえば、中学生であれば、現在の学校との関係を保ちながら、高校進学に向けた準備を進めることができます。
高校生であれば、転学や通信制高校など、状況に応じて別の選択肢を検討することもあります。
大切なのは、学校へ戻るか戻らないかという二つの選択肢だけで考えないことです。
子どもが学び続けられること。
安心できる人間関係を持てること。
将来の選択肢を残せること。
そうした視点から支援を考えることで、保護者自身の不安も整理しやすくなります。
5.親の願いを大切にしながら、子どもの未来を支える
「学校へ行ってほしい」と思う自分を責めない
不登校について学ぶほど、
「学校へ行ってほしいと思ってはいけない」
と感じてしまう保護者がいます。
しかし、親の願いそのものを否定する必要はありません。
学校へ行ってほしいと思う。
友達と楽しく過ごしてほしいと思う。
勉強を続けてほしいと思う。
将来、自分の力で生きていけるようになってほしいと思う。
それらは、子どもを大切に思う気持ちから生まれる願いです。
ただし、その願いを実現する方法は、一つではありません。
学校へ戻ることだけが、子どもの未来を守る方法ではないのです。
親の希望と子どもの希望を分けて考える
親子で学校について話すときには、二つの気持ちを分けて考えてみましょう。
「私は学校へ行ってほしいと思っている」
という親の気持ち。
「今は学校へ行くのがつらい」
という子どもの気持ち。
どちらか一方を間違いと決める必要はありません。
そのうえで、
「今、何に困っているのか」
「どんな方法なら負担が少ないのか」
「学校以外にもできることはあるのか」
を一緒に考えていきます。
ただし、子どもがまだ話せる状態でなければ、無理に答えを求める必要はありません。
保護者が情報を集め、選択肢を整理しておくことも支援になります。
子どもの人生を、子ども自身が選べるようにする
保護者は、子どもより長い人生経験を持っています。
そのため、将来を考えて、
「こうしたほうがいい」
と助言したくなることがあります。
もちろん、必要な情報を伝えたり、危険を避けるために判断したりすることは、親の大切な役割です。
しかし、子どもの人生をすべて親が決めることはできません。
どんな学校で学びたいのか。
どんなことに興味があるのか。
どんな人と関わりたいのか。
将来、何をしてみたいのか。
そうしたことを、子ども自身が少しずつ考えられるように支えることが大切です。
学校へ行けない期間も、子どもが自分の気持ちを知り、将来を考える時間になり得ます。
親が先に答えを決めるのではなく、子どもが自分で選択できるように準備する。
それが、長い目で見た支援につながります。
最後に
「学校へ行ってほしい」
その気持ちを、無理に消す必要はありません。
ただし、その願いが強くなりすぎて、子どもの今の苦しさが見えなくならないようにすることが大切です。
学校へ行けない日が続いても、子どもの人生が止まったわけではありません。
学校との関係を調整することもできます。
家庭で学習を続ける方法を考えることもできます。
別の学び方や進路を検討することもできます。
そして、子どもが自分から学校について話し始めたときには、すぐに登校を約束させるのではなく、まずその気持ちを聞くことができます。
「学校へ行ってほしい」という親の願いと、「今は行けない」という子どもの気持ちは、同時に存在していてもいいのです。
親が願いを持つことと、子どもの意思を尊重することは矛盾しません。
大切なのは、親の希望を子どもに押しつけるのではなく、その希望の奥にある「幸せになってほしい」という思いを、今の子どもに合った支援へと変えていくことです。
学校へ戻る道も、別の場所で学び直す道も、子どもの未来につながる可能性があります。
学校へ行くことだけを急ぐのではなく、子どもがこれからも学び、自分の人生を選んでいけるように支える。
それが、「学校へ行ってほしい」という気持ちと向き合うときに、保護者が大切にしたい考え方なのです。
実際の例はこちらから
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