① 不登校になったとき親が最初に知っておきたいこと(理論編)
- 1. 親が最初に感じる「焦り」は自然なもの
- 1.1. 親が焦るのは、子どもの将来を心配しているから
- 1.2. 「今日」と「将来」をいったん分けて考える
- 2. 最初に必要なのは「原因探し」より「状態を見ること」
- 2.1. 子ども自身にも理由が分からないことがある
- 2.2. 言葉よりも日常の変化を見る
- 3. 「学校へ行かせること」と「子どもを支えること」を分けて考える
- 3.1. 登校できても苦しさがなくなったとは限らない
- 3.2. 「元の状態に戻す」ことだけを目標にしない
- 4. 子どもにとって家庭を「評価されない場所」にする
- 4.1. 「何をしたか」だけで一日を評価しない
- 4.2. 安心できる場所が次の行動につながる
- 5. 親も「正しい対応」を完璧にしようとしなくていい
- 5.1. 一度の失敗ですべてが決まるわけではない
- 5.2. 親自身にも支えが必要
- 5.2.1. 実際の例はこちらから
子どもが「学校へ行きたくない」と言ったとき、多くの保護者は戸惑います。
昨日までは学校へ行っていたのに、突然布団から出てこなくなった。
朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える。
「今日は休みたい」と言う日が増えてきた。
そんな様子を見ると、
「このまま不登校になったらどうしよう」
「休ませてしまって本当にいいのだろうか」
「勉強が遅れてしまうのではないか」
「高校や将来はどうなるのだろう」
と、次々に不安が浮かんできます。
そして、親として何とかしなければと思うほど、子どもにさまざまな言葉をかけたくなります。
「明日は行けそう?」
「少しだけでも行ってみたら?」
「いつまで休むつもりなの?」
けれども、不登校への対応で最初に必要なのは、子どもを急いで学校へ戻す方法を探すことではありません。
まず必要なのは、親自身が「今、子どもに何が必要なのか」を考えられる状態になることです。
第2章では、子どもを動かす方法ではなく、子どもが安心を取り戻すために親ができることを考えていきます。
その最初に知っておきたい基本的な考え方を整理してみましょう。
親が最初に感じる「焦り」は自然なもの
子どもが学校へ行けなくなると、保護者の頭の中では「現在」と「未来」が一気につながります。
今日学校を休んだ。
そこから、
「明日も休むのではないか」
「このまま一週間休んだらどうしよう」
「授業についていけなくなるのではないか」
「高校へ行けなくなるのではないか」
「将来、社会に出られなくなるのではないか」
と、まだ起きていない未来まで考えてしまいます。
親が焦るのは、子どもの将来を心配しているから
親の焦りの根底にあるのは、多くの場合、子どもへの心配です。
「普通に学校生活を送ってほしい」
「困らないようにしてあげたい」
「将来、自立できるようになってほしい」
そう願っているからこそ、学校へ行けない状況を見ると不安になります。
つまり、焦ることそのものが悪いわけではありません。
問題になることがあるのは、その焦りがそのまま子どもへの言葉や態度として現れてしまうことです。
「いつまで休むの?」
「みんなは学校へ行っているよ」
「このままで高校に行けると思っているの?」
親としては「何とかしてあげたい」という気持ちから出た言葉でも、子どもには、
「学校へ行けない自分は認めてもらえない」
「自分は親を困らせている」
「このままの自分ではダメなんだ」
と伝わることがあります。
「今日」と「将来」をいったん分けて考える
不登校になった直後ほど、遠い未来まで一度に考えないことが大切です。
今日学校へ行けなかったからといって、今日中に進路まで決める必要はありません。
まず考えたいのは、
「今日、この子はどのような状態なのか」
ということです。
眠れているのか。
食事は取れているのか。
家では話せているのか。
何かを楽しむ余裕はあるのか。
学校の話をしたとき、どんな反応をするのか。
未来を考える前に、現在の子どもの状態を見る。
それが、親の関わり方を考える最初の一歩になります。
最初に必要なのは「原因探し」より「状態を見ること」
子どもが学校へ行けなくなると、
「何が原因なの?」
と聞きたくなるものです。
友達なのか。
先生なのか。
勉強なのか。
部活動なのか。
いじめなのか。
原因が分かれば、問題を解決できるように感じるからです。
しかし、不登校の場合、原因が一つだけとは限りません。
子ども自身にも理由が分からないことがある
たとえば、子どもに、
「どうして学校へ行けないの?」
と聞いたとします。
すると、
「分からない」
「別に」
「何となく」
という答えが返ってくることがあります。
保護者からすると、
「何か理由があるはずでしょう」
と思うかもしれません。
しかし、本当に本人にも説明できない場合があります。
友人関係で少し疲れている。
授業についていくのが少し苦しい。
先生の前では緊張する。
周囲に合わせ続けるのが疲れる。
失敗することが怖い。
朝早く起きるのがつらい。
そうした小さな負担が重なっていると、
「これが原因です」
と一つに絞ることができません。
だからこそ、最初から原因を聞き出そうとするより、
「今どんな状態なのか」
を見ることのほうが重要です。
言葉よりも日常の変化を見る
子どもが理由を話してくれなくても、日常生活にはさまざまな変化が現れることがあります。
以前より眠る時間が増えた。
朝になると体調が悪くなる。
食欲が落ちた。
家族との会話が減った。
イライラすることが増えた。
自分の部屋から出てこなくなった。
学校から帰るとすぐ横になるようになった。
こうした変化は、子どもの負担を考えるための手がかりになります。
「どうして行けないの?」
だけを繰り返すのではなく、
「最近、この子にどんな変化があっただろう」
と考えてみることが大切です。
「学校へ行かせること」と「子どもを支えること」を分けて考える
不登校への対応で大きな転換点になるのが、この考え方です。
子どもを支えることと、学校へ行かせることは、必ずしも同じではありません。
もちろん、本人が学校へ戻りたいと思っているのであれば、その希望を支えることは大切です。
しかし、親の目標が、
「とにかく学校へ戻す」
だけになってしまうと、子どもの現在の状態が見えにくくなることがあります。
登校できても苦しさがなくなったとは限らない
たとえば、親に強く促されて、子どもが何とか学校へ行ったとします。
保護者は、
「今日は行けた」
と安心するでしょう。
しかし、本人が一日中強い緊張の中で過ごし、帰宅後に動けなくなるほど疲れていたとしたらどうでしょうか。
表面的には「登校できた」としても、問題が解決したとは限りません。
反対に、学校には行けていなくても、
家族との会話が増えた。
朝起きられる日が増えた。
外へ出られるようになった。
好きなことを楽しめるようになった。
少し勉強してみようと思えるようになった。
こうした変化が起きているのであれば、子どもは少しずつ力を取り戻している可能性があります。
「元の状態に戻す」ことだけを目標にしない
親としては、
「以前のように学校へ行ってほしい」
と思うでしょう。
しかし、不登校を経験した子どもに必要なのは、必ずしも以前とまったく同じ状態へ戻ることではありません。
不登校をきっかけに、
自分はどんな環境なら過ごしやすいのか。
何が苦手なのか。
どんな学び方が合っているのか。
誰となら安心して話せるのか。
そうしたことを知っていく場合もあります。
「元に戻す」のではなく、
「これからどう生きていくかを一緒に考える」
という視点を持つと、親の関わり方も変わってきます。
子どもにとって家庭を「評価されない場所」にする
学校では、子どもはさまざまな形で評価されています。
テストの点数。
提出物。
授業態度。
運動。
友人関係。
集団の中での振る舞い。
本人が意識しているかどうかにかかわらず、
「できた・できない」
「周囲と同じようにできる・できない」
という評価に触れながら生活しています。
学校生活に疲れた子どもが家庭へ戻ったとき、家庭でも同じように評価され続けると、安心できる場所がなくなってしまいます。
「何をしたか」だけで一日を評価しない
学校へ行かなかった。
勉強もしなかった。
昼まで寝ていた。
ゲームをしていた。
そんな一日を見ると、
「今日は何もできなかった」
と感じるかもしれません。
しかし、その子にとっては、
しっかり眠れた。
家族と一緒に食事ができた。
久しぶりに笑った。
自分から少し話した。
外に5分出られた。
それだけでも意味のある一日かもしれません。
親が結果だけを見るのではなく、子どもの小さな変化を見るようになると、家庭の雰囲気も少しずつ変わります。
安心できる場所が次の行動につながる
人は安心できる場所があるからこそ、新しいことに挑戦できます。
失敗しても戻れる場所がある。
うまくできなくても責められない。
困ったら相談できる。
そう思える場所が家庭にあることは、不登校の子どもにとって大きな支えになります。
親がすべての問題を解決する必要はありません。
まずは、
「ここでは無理をしなくてもいい」
と思える環境をつくること。
それが、その後の回復や学習、進路を考えていくための土台になります。
親も「正しい対応」を完璧にしようとしなくていい
不登校について調べると、
「こう声をかけましょう」
「これは言ってはいけません」
「見守ることが大切です」
と、さまざまな情報が出てきます。
それを読むほど、
「昨日、言ってはいけないことを言ってしまった」
「自分の対応が悪かったのではないか」
と不安になる保護者もいます。
しかし、親も人間です。
不安になる日があります。
腹が立つ日もあります。
思わず強く言ってしまうこともあります。
一度の失敗ですべてが決まるわけではない
大切なのは、一度も間違えないことではありません。
言いすぎたと思ったら、
「昨日は強く言いすぎたね」
と伝えることもできます。
子どもの気持ちを聞かずに決めてしまったなら、
「あなたはどうしたい?」
と聞き直すこともできます。
親子関係は、一回の会話ですべてが決まるものではありません。
何度でも修正できます。
親自身にも支えが必要
そして、不登校の子どもを支えるとき、保護者自身が一人で抱え込まないことも重要です。
家族。
学校。
地域の相談窓口。
必要に応じた専門機関。
子どもの学習を支える人。
相談できる相手を少しずつ増やしていくことも、子どもへの支援につながります。
保護者が疲れ切ってしまえば、子どもを落ち着いて見守ることも難しくなります。
だからこそ、
子どもを支えることと同時に、親自身も支えられていい
という視点を持っておいてください。
不登校になった瞬間から、すべてを正しく判断できる親はいません。
分からなくて当然です。
迷っても構いません。
そのたびに、
「今、この子には何が必要だろう」
と考え直せばいいのです。
学校へ行かせることを急ぐのではなく、まず子どもの状態を見る。
理由を無理に聞き出すのではなく、話せる関係をつくる。
遠い将来を一度に決めるのではなく、今日できることを考える。
そして、家庭を安心して戻ってこられる場所にする。
不登校になったとき、親が最初に知っておきたいのは、特別なテクニックではありません。
子どもをすぐに変えようとするのではなく、まず「この子を理解するところから始める」ということです。
そこから、親子の新しい歩みが始まります。
実際の例はこちらから
① 不登校になったとき親が最初に知っておきたいこと(実践編)
はじめに 「学校へ行きたくない」 子どもから初めてそう言われたとき、落ち着いて受け止められる保護者は多くありません。 「何があったの?」 「友達と何かあった?」 「今日は休んでも、明日は行ける?」 心配だからこそ、理由を […]
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